第65話 試し

「なんじゃ、あの勇者もお前と同じ異世界人だったのか。通りで今までの勇者と雰囲気が違うわけじゃ。」


と立ち尽くす僕にノアが言う。あれ、ノアに僕が異世界人だと言ったっけ。


 僕の脳みそすらない頭で考えても仕方がないので、「僕はミーナのことが嫌いになるのか?」とノアに聞く。ノアに聞いても答えが出るとも思えなかったが、取りあえず聞くのはいいだろう。


「お前がミーナのことを嫌いになるかだって? そんなこと知るか。そもそもお前とミーナはまだ始まってすらないじゃろ。一度でもミーナに好きと言ったのか? ミーナはお前に好きと一度でも言ったのか? まだじゃろ。」


と、まるでずっと見ていたかのような的確な返答が帰ってきた。


「それに、お前はミーナとお前が結ばれたあとのことを少しでも考えたのか? セックスしたいとしか考えていないんじゃないか? ミーナを幸せにするなんて抽象的なところで思考を止めるな。そんなんだからあの勇者に童貞と馬鹿にされるのじゃ。」


 ぐぬぬ……。


 ノアは正しい。それにあの裸勇者だって正しいのだ。あの裸勇者が正しいことは分かっていたが、僕は根拠もなく否定することしかできなかった。


 裸勇者の言う通り、僕は異世界だから少女に手を出してもいいだろうと考えていた。今はたまたま僕の体がこんな感じなので手を出せていないだけで、もし普通の人間の身体だったならきっとザァメンのように手を出していただろう。そういう意味ではザァメンは、あり得たかもしれない僕だ。僕だって少女の平らな胸にほっぺたを押し付けたかったし、小さなお尻を枕にして割れ目に舌をわせたまま眠りにつきたかった。


 それと同時に、少女を痛めつけるこの異世界にいきどおりを感じていた。


 前の世界の常識や習慣に囚われるならば、僕のような全身凶器ロリコン野郎はミーナとも会わずに山で野垂れ死ぬべきだったのだ。そして、この世界の常識や習慣に囚われるならば、ザァメンのように少女とイチャイチャしまくって人生を謳歌するべきだったのだ。


 しかし、この身体が、そのどちらの選択肢も選ばせてくれない。


 触れるもの全てを勝手に吸収するし、そもそも餓死するかどうかも怪しい。


 ちんちんだってないし、セックスはもちろんできない。


 今までまともに僕の身体に触れたのはノアぐらいだ。前に、腕の魔力を完全に断つことによってノアは僕に触ったが、ミーナにも同じことができるだろうか? 生物にとって魔力は存在するのが当たり前だから、完全に消すのは難しいとむかし芳香剤は言っていた。


 あれこれ考えていると、ノアが耳を疑うことを言った。


「試しにわらわとセックスしてみるか?」


 あぁ、試しにセッ……え?


 ……な、な、なん……なんだって!?

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