第8話 わかったこと

 色々と村の様子をみてわかったことがある。


 まず最初の家の女性は着痩せするタイプ……というのは置いておいて、村には猟師チーム、農民チーム、工作チームがいるようだ。本当にチーム制度をとっているかは知らないが、役割分担としてそうなっていた。


 若い男は猟師チームに入り、年を取ると農民チームに入るようだ。女性と子供は工作チームと農民チームが半々という感じだ。


 それから、やはりというか、ミーナの食事は他の家に比べて極端に貧相だ。


 それは、あの家の中でミーナには残り物が与えられていることと、そもそもあの家に分配される食料が少ないことも原因であるようだった。


 ミーナの家が食事のタイミングを見計らって覗いたから間違いない。


 片腕の男が「俺たちのような役立たずに食わせる肉はねえってよ」と言ってミーナには野菜屑を与えながら、自分ではザコウルフ肉のスープを飲んでいるのを見た時は本気で殺そうと思った。


 あの時の僕はよく耐えたものだ。


 ミーナは何も言わずジャガイモの皮だけかき集めたような何かを食べていた。たとえ見えていなくても、クソ男が肉を食っていることは匂いでわかっているはずなのに。


 もしかしたら口答えをすると殴られるのだろうか。そうするとミーナの体の痣にも説明がつく。


 ちなみに婆さんも野菜屑を食べていた。体を起こすのがやっとなようであった。

 失礼だが本当に生きていたのかと思ってしまった。


 ここからは僕の推測が大いに入るが、あの村から離れたミーナの家は、この村にとっての姥捨山うばずてやまのようなものなのではないだろうか?


 実際年寄りがいたこともそうだが、クソ男は体格も屈強という訳でもないし、片腕では猟師、農民、工作のどのチームにも入れなさそうだ。クソ男の「俺たちみたいな役立たず」というセリフにも頷ける。


 ミーナはカゴも作れるようだし工作チームに入れてやれよと思うが、やはり目が見えないというのが大きいのだろう。家族がいれば違ったのかもしれない、と僕は子供の世話をする女性を思い出す。


 というか本当に家族はいないのか?


 確かに全ての家を見たがミーナに似ている大人はいなかった。もし本当は村の中に家族がいて、そいつらがミーナを捨てこの肥溜め小屋に突っ込んだんだとしたらそいつらをぶち殺してやる。


 ミーナ。


 僕は窓の外から、床の上で寝ているミーナを見つめる。


 毛布も何もかけていない。猫のように体を丸めて眠るミーナ。


 僕はミーナのために何ができるだろうか。上手い解決方法が、ミーナが幸せになれる方法が何も思いつかない。


 ――僕は無力だ。


 僕は異世界に転生しても前の世界と変わらずクソッタレの役立たずだ。嫌になる。


 ミーナ、今はゆっくりとおやすみ。


 僕はフルーツや木の実を探しに夜の森へ入っていった。明日ミーナにあげて、そのまま食べてくれるように。


 こんなことは根本的な解決にはならないと思いつつも。

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