第19話 ミーナの決意

「わたし、このままじゃいけないと思うの!」


とミーナは言う。


「ドゥボ?」

「ドゥティに助けてもらってばっかだし……ご飯も持ってきてくれるし……私も何かドゥティにお返ししたい!」


 なんだ、そんなことか。


 そんなこと気にすることないのに。ミーナが幸せなら僕も幸せなのだ。


「ヌェチャ、イイ。ドゥヌチィ、イイ。」

「それじゃあダメなの!」


とミーナは腕をぶんぶん振り回す。


「ねぇ、ドゥティはなにか私にしてほしいことはないの?」


 ミーナにしてほしいことか。何かあるだろうか?欲を言えば猫耳をつけてみてほしいし、綺麗なドレスを着て僕と踊ってほしい。ただこれを言ってもミーナは満足しない気がするし、今の僕の語彙力では伝えるのが難しい。そもそも僕は踊れない。


 あれこれ考えていると、ミーナは言った。


「決めた! わたし、魔法使いになる!」


 魔法使い?


「ほら、魔法でドゥティも喋れるようになったでしょ? だからね、私も魔法で目が見えるようになるかなって。もし見えるようにならなくても出来ることは増えるし……。それにね、魔法使いになったら魔法でドゥティを守ってあげるの!」


と言ってミーナはこれは名案だと鼻息を荒くしている。


 もしミーナの目が見えるようになったら、僕の姿に幻滅するだろうか?と僕は思う。


 ミーナならそんなことはないと思えるが、物事に絶対はない。ちょっと不安だ。


 しかし何にせよやりたいことが出来るのはいいことだ。僕は目一杯応援する。


 どうすればミーナは魔法使いになれるだろうか。図書館からこっそり魔道書を盗み出すか、強盗するか、魔法を使える人を拉致して聞き出すか。というか本はミーナが読めないからダメだ。もう少し僕がうまく喋ることができたら教えてあげられたのに。


「魔法使いに弟子入りしよう!」


とミーナが言う。弟子入りとな、思いつかなかった。


 僕は魔法使いの知り合いはいないが、すごそうな魔法使いが住んでいる場所なら多分知っている。昔、どこかの山のてっぺんにぽつんと城があることを発見して、なんだこの城?と不法侵入しようとしたとき、設置式の魔法陣から魔法がドカドカと飛んできて撃退されたことがある。


 そこの住人は高名な魔法使いに違いない。


 正確な場所は曖昧だが目立つ山だったしなんとかたどり着けるだろう。


「ね、ドゥティ、どう?」

「ドゥボ! イイ! イイ!」

「ね! じゃあ魔法使いを探そう! 街の近くで見張ってればすぐ見つかるかな?」

「ドゥヌチィ、イエ、ヒッヘウ」

「家、知ってるって? 魔法使いの家?」

「ドゥボ!」

「わ! さすがドゥティ! お友達なの?」

「イイエ……」

「そうなんだ。でも、行ってみよう!」


と言ってミーナは僕の上によじ登る。ミーナがすっぽりとはまる専用スペースに収まると、僕は駆け出した。こっちの方角……な気がする。

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