第61話 ただいま

 ビッグ狼モードのフェンで魔王城のある岩山に乗り付けると、ガーゴイルが2匹ガーガーと飛んできた。おっ、ノアはガーゴイルを作り直していたのか。僕は懐かしいなと思いながら、とりあえずその邪魔な羽虫を触手で叩き落として破壊する。


 フェンに頼んで城の横に大樹ハウスを植えてもらうと、僕はノアの城へと入っていった。

 

 テラスに行くと、ついさっき城の横に生えたばかりの大樹の緑に心を癒されながら、優雅に紅茶を飲んでいるノアを発見する。


 1年以上会っていなかったが、ノアは特に変わった様子もなく、


「なんじゃ、帰ってきたのか。」


と言って僕には興味もなさそうに紅茶をすすっていた。


 それでも僕は、「帰ってきた」という言葉をノアが使ったことが少し嬉しかった。この城はもう僕の家だ。


 僕はリコが死んだとき、ノアが僕を踏み潰して励ましてくれたことを思い出して、


「ノア、アヒカホウ。」


と礼を言った。


 それに対してノアはふんっと鼻を鳴らすだけだったが、まあ伝わっているだろう。


 ちなみにマミーは相変わらず未亡人オーラ全開で、マミーを前にすると精神年齢が1桁に退化しそうになるのをこらえるのが大変だった。



 それから僕とノアは積もる話をたくさんした。


 魔族であるノアにとって1年ちょっとなんて一瞬らしくて、積もってるのは僕の方ばかりだったが、クソ魔法陣に侵された子どもたち、チンカス教会、我が家の眠り姫たちの話をした。


「人間は変わらんのう。昔から少女に対しては何をしても良いという価値観が文化として受け継がれておる。その教会も氷山の一角でしかないじゃろう。いくつかの国でも、国の社会保障の一環として似たようなことをやっていたはずじゃ。」


とノアは言う。


 そうなのか?だとすると人間は一回くらい滅んだほうが世のためなのではないだろうか?


 ……本当に滅ぼすか?


「お主の言っていたマーラー国もそうじゃ。確かあそこは、少女の奴隷に関しては国が金を出して値段を下げたり、税金の代わりに少女を納めるということもまかり通っていると聞いたのじゃ。」


 なんだと?


 あのマーラーが?あのおっさんはそんなに悪い奴には見えなかった。それともあのおっさんはそういう国の政策には無頓着で、裏でそういう施策を打っている奴がいるのか?これは確認しなくてはならない。


 ノアとマミーは眠り姫たちについて、


「マリー。アレ、使えないか?」

「アレのことね。ぴったりだと思うわ。準備しましょう。」


と、何かをたくらんでいる様子だった。


 アレってなんだろう。この二人なら任せても大丈夫……だよね?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る