第55話 クソとカスの二択

 大樹ハウスについた頃には18人いた女性たちはたったの3人になっていた。


 やはり禁断症状があったのだ。


 ある女性は自分の目玉をくり抜いて投げて遊び出すし、また別の女性は「私の子供はどこ?」と言ってそこらへんに生えている草をもしゃもしゃと食べはじめて毒草にあたって死んだ。ミーナに「私を殺して!」と懇願しながらも逆にミーナを殺しそうな勢いだったので代わりに僕が殺した女性もいた。


 地獄だった。


 最終的にみんな木のツルでぐるぐる巻きにして動けないようにしたけど、自分の舌を噛み切って流れ出る血で溺死した女性もいた。


 やっとのことで三人はなんとか生きている状態で大樹ハウスまで帰ってきたが、


「……ごめんなさい。私では、この人たちを治すことはできないわ。」


と芳香剤は言う。


 僕は怒りのあまり地面をぶん殴るけど、わかっている。芳香剤は何も悪くない。


「……脳が器質的に変化しているの。よほど強力な薬を常用したか、何かしらの手術を受けている可能性もあるわ。」


と芳香剤は続けた。


 フェンがその女性たちの匂いをいで、私のグレイプニルを盗んだやつもこんな匂いだったと言っていた。芳香剤によるとこの匂いは、サテュリオ草という媚薬として使われる植物のお香らしい。それ自体に強い毒素はないらしく、彼女たちをあんな廃人にしたのは別の何かなようだ。



 結局、薬漬けにされた女性たちを救う良案が何もないまま、夜を向かえる。


 芳香剤は「もう少し治療法がないか探ってみるわ」と言って、ぐるぐる巻きにした3人の女性と工房にこもっている。


 それにしても、もし治療の手段がないとするならば……僕は少女農場を潰す度に、そこにいる女性を皆殺しすることになるのか?


 果たしてそれは、本当にやった方がいいことなのだろうか?


 そこにいるクソ男どもを殺すことにはなんら抵抗はない。むしろお掃除感覚でせいせいするくらいだ。しかし女性たちは違う。おそらくどこかから連れ去られた被害者であろう。そうでなくてはあそこまで美人の女性が揃うはずがない。


 本当に僕は、その被害者である女性たちを、殺して回るべきなのか?


 どこかにミーナの母親がいるかもしれないのに?


 ……はっきり言って、やりたくない。


 しかし、その少女農場がミーナのような女の子を産出し続けていることも事実だ。何がなんでも潰さなくてはならない。


 少女農場を潰しても地獄、潰さなくても地獄。


 僕は……どうすればいいんだ?

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