第54話 女性たち
とりあえず男たちが全員死んで危険はなくなったことを確認すると、僕は振り返ってミーナの様子を伺う。
「ミイナ」
と僕は声をかける。
「……。」
返事はない。
クソ教団の訳のわからない教義で顔も知らない親から生まれて、不幸な環境に身を置く羽目になったのだ。それもそっちの方が世界が幸福になるからという不条理な理由で。その気持ちは僕には計り知れない。
二人の間に、重い空気が流れる。
それに僕だってこのミーナとの出会いが……ミーナとの掛け替えのない日々が全てクソ教団のお膳立てだったと考えると
僕がミーナを好きであれば好きであるほど、クソ教団の正しさを裏付けてしまっている気がするのだ。
不幸な環境に置かれる少女たちを、僕がどこかで求めていることを否定し切れない。
不幸な環境に置かれる少女だったのならば、ミーナでなくてもよかった可能性を否定し切れない。
ミーナになんて声をかければいいのか、僕も言葉を失っていると、ミーナは突然自分のほっぺたをパンッと両手で叩いて、
「今はぼけっとしている場合じゃないよね! この人たちを助けなきゃ!」
と言った。
その言葉に僕はハッとさせられる。その通りだ。
少なくともこんなことを考えるのは今ではない……と思うと同時に、これもまた不幸な人を助けて僕やミーナが今直面している問題から一時的に目を逸らすという利益を得ているだけではないのか?という考えが頭をよぎるが、無理やりかき消した。
乱行部屋の中を見ると、直前までまぐわっていた男どもが目の前で死んだというのに、裸の女性たちは気にも止めずに女同士で続きをしていた。
……これはどう見ても異常じゃないか?
キンタマを潰されて床でうずくまる牧師にも女たちは群がっていて、牧師の血だらけの股間を触りまくっている。
……僕にキンタマはないけどあんなことをされたらと思うと空恐ろしい気分だ。
おそらくだがこの女性たちはクスリ漬けにでもされているのだろう。かつては美人であったであろう女性たちは、今は鬼気迫る表情でタマなし牧師の股間に夢中になっている。
どんなクスリを使っているかはわからないが、治療できるものだろうか?それに副作用や禁断症状が何かあってもおかしくない。
もしも治療できなかった場合、最悪の場合……殺した方がこの女性たちのためなのだろうか?
それともたとえ性欲を貪るマシーンと化したとしても、生きていた方が幸せなのだろうか。
いや、最悪の場合を考えることはやめよう。芳香剤ならなんとかしてくれる……はずだ。僕は女性たちを全員大樹ハウスへ連れ帰ることを決意する。
僕は他のクソったれ少女農場の場所を聞き出すために、タマなし牧師を蹴飛ばして起こす。しかしタマなし牧師は失血死かショック死かは知らないがすでに事切れていた。
仕方ない、他の乱行部屋は自分で探そう。
僕は足が無駄に多い馬となって大樹ハウスへと駆け出した。
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