第82話 エピローグ
結果として僕の肥大化した身体は、一週間ほど経って尻穴球体が徐々に回復してきたことによって元に戻る。ついでに眼球も治った。
僕の身体は山より大きい狼モードのフェンよりも更に大きかったので、移動することもままならなかった。僕が少し移動するだけでその一帯を不毛の大地にしてしまうのだ。
環境破壊は芳香剤に怒られそうなので、僕はその一週間かつてマーラー国があった場所にただただ座って過ごしていた。たまにミーナやクルルがフェンに乗ってお見舞いにきてくれるので、僕の身体をプールにして泳がせて遊ばせていた。
ちなみに街の住民は、僕の触手洪水が街を侵食するその直前に、フェンが危険を察知して街ごと食らって事なきを得た。フェンに感謝だ。
街の住民は大体生きていたが、マーラーは恐らく死んだ。一応探してはみたが、フェンの腹の中にも結局いなかった。多分僕の身体に吸収されてしまったんだろう。
そして僕はミーナに好きだと言ったものの、別に二人の関係に大きな変化があったわけではない。まあ大体いつも通りだ。変わったことと言えばミーナが頻繁に好き好き言ってくるようになったことくらいだろう。それを見たクルルも負けじと好き好き言ってくるので、僕はこんなに幸せでいいのだろうかと逆に悩む。
とはいえ病み上がりの僕ではあるが、遊んでばかりもいられない。
チンカス教会だってまだ生き残りがいるだろうし、我が家の眠り姫たちの治療法もまだわからない。
これからのことについても考えなくはいけない。これからの僕と、ミーナの生活についてだ。
僕とミーナだって喧嘩くらいするだろう。子供だってどうやって作るのかすら分からない。僕の寿命がどのくらいか知らないが、もしかしたらミーナの方が先に死んでしまうかもしれない。そのことを少しでも想像すると悲しい気持ちになるが、ミーナが生きてるうちにいっぱい笑い合うだけだ。
結局、僕のかつての悩みは、何一つとして解決されていない。依然としてミーナはまだ子供だし、時間が経つにつれて、やっぱり好きってなんだろう?って思ってしまう時もある。でもまあ、それはそれでいいかと僕は思う。根本的な原因は何も取り除かれていないが、ただそれについて僕が気にしなくなった。環境は何も変わっていないが、僕の心のあり方が変わっただけだ。でもそれは、大きな進歩であると僕は思う。
ミーナは子供だからダメ? そんなこと知るか。僕はミーナのことが好きなのだ。もしかしたらこれはあの女勇者の言った通り、好きならばなんでも許されると思ってる童貞の理想化なのかもしれない。仮にそうだとしても、だからなんだって言うんだ? そんなことはどっちだっていいじゃないか。
もとの世界の基準がどうとか、童貞だとか、色んなつまらないことに僕はいちいち悩まなくなった。そんなことについて悩んでいる時間があったら、言葉を喋る練習をしたり、魔法の練習にでも時間を費やした方がよっぽどいい。人生はもっとシンプルなのだ。僕はただ、今生きているこの世界を必死で生きるだけだ。ミーナと、一緒に。
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