第57話 日の終わり

 太陽が昇ると同時に僕はビッグ狼モードのフェンにまたがり走り出す。


 大きなかごに入れて担いだ200個の毒リンゴが揺れる。


 ミーナとクルルも、落っこちないようにしっかりと僕にしがみつく。


 街を見つけるたびにフェンから飛び降り、そのまま流星のように教会にダイブする。屋根を突き破って突然舞い降りた僕に驚く神官たちを無視して、家宅捜索を実行する。


 いない。いない。いない。


 端からドアを蹴破っている僕に、「おのれ悪魔め!」と神官が火球を打ち込んでくるがそれも無視だ。


 ここはハズレだ。次!



 ――次の教会は当たりだった。地下に乱行部屋を発見する。


 女性たちにまたがってヘコヘコと腰を振るクソ男どもを全員壁に叩きつけて破裂させ、牧師だけは殺さずに知っていることを洗いざらい喋らせる。


 その牧師いわく、教会の名前は聖少女教会。


 はりつけにされた少女の十字架が目印だ。


 僕はクソ聖少女チンカス教会の名前をしっかりと頭に刻み込み、牧師の頭をワンパンで吹き飛ばす。死んで償えクソどもが。


 股を広げる女性たちの上の口に毒リンゴを無理やりねじ込み、眠りについた女性たちをフェンの口に放り込んでいく。フェンの胃袋の中ではミーナとクルルが待機していて、次々と降ってくる女性たちを回収する。


 いっちょあがりだ。次!



 そんな作業を何回も繰り返し、そろそろフルチン男を殺すプロフェッショナルになってきたところで毒リンゴが底を突く。チンカス教会は9件潰した。何回か無関係な別宗教の教会を襲撃してしまったが許してもらおう。僕が神だ。


 フェンの胃袋的にはまだ余裕があるが、毒リンゴがなくなってしまったので僕たちは一旦大樹ハウスに戻ることにする。クルルは胃袋に残って女性たちを見守り、ミーナはフェンのお尻からぷりっと出てきた。


 大樹ハウスに向かうフェンの背に揺られながら、ミーナがぽつりと呟くように言った。


「ねぇ、ドゥティ......ドゥティも、私にああいうことしたいなって思うの?」


 ああいうことってなんだろうか。


 もしかして......おせ、おせっくすのこ、ことだろうか?


 ......したい。もちろんしたい。ミーナとおせっくすできるなら死んでもいい。ミーナと一つになりたいと僕は思う。僕の体にちんちんなんて存在しないので、性的な意味ではない。もっと......こう、精神的な意味で一つになりたいのだ。


 乱行部屋で行われていたように、セックスは一つの暴力だ。僕はそんな暴力をミーナに向けたくはないし、ミーナもそれを望まないだろう。......それとも、望んでいるのか?そうだとしたら僕の体では無理だ。いや、そもそもそんなことはありえない。そんなものは、ミーナが僕とのおせっくすを望んでいてほしい、という僕の願望の投影でしかないのではないか?


 考え込む僕を見てミーナは、


「ふーん」


と言って、ぷいっと顔を背ける。顔が見えないので、今ミーナが喜んでいるのか悲しんでいるのかわからない。


 僕は、なんて答えるべきだったんだ?


 ミーナはフェンの体毛に顔を埋めて、かたくなに顔を見せてくれない。


 その代わり、お尻を突き出す姿勢になってパンツが丸見えだ。頭隠して尻隠さずというやつである。


 僕は夕日に赤く染まるミーナのお尻を眺めながら、フェンの背に揺られ続けていた。

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