第78話 似た男

 僕の触手がマーラーの頭を破裂……と思ったが、マーラーのクソが詰まった頭は既にそこにはない。あの状態から、避けたのか?


「悪いが、まだこいつを殺させるわけにはいかない。」


 男の声が部屋に響く。この声は……ザァメンだ。あのいけすかないクソ男だ。


 声の方向を見ると、マーラーの首根っこを掴んだザァメンがたたずんでいた。


「おい、助けるならもっと優しく助けんか。」


と言うマーラーを後方にぽいっと投げ飛ばして、ザァメンは剣を構える。


「……ロリイーター。それがお前の出した答えか。随分とつまらない答えにたどり着いたものだな。」


 ザァメンの手元が一瞬ぶれたかと思うと、僕の触手が両断される。


 ……はやい。僕はすぐに触手を再生する。


「お前だって少女が好きじゃないのか? どうして自分の欲望に正直にならない。」


と言ってザァメンは僕が触手を生み出す先から切り刻む。再生が間に合わない。そういえばこいつは、フェンよりも賞金の高い暗黒竜を討伐しに行っていたんだ、と今更ながら思い出した。


「少女を犯したいと思わないのか? 本当は、お前のその汚い肉体で、傷一つない綺麗な少女を蹂躙じゅうりんしたいんだろう? 俺とお前は似たもの同士だ。だから俺には分かる。」


 ザァメンの一閃で僕のクソダサアーマーの肩当てが剥ぎ取られる。今までこの鎧は、ノアの転移魔法含めてどんなことでもびくともしなかったのに。


「ロリイーター、お前の気持ちも分かる。異世界で悲しむ少女を助けて、全能感に浸りたいんだろう? 助けた少女を洗脳して、その少女の全てになりたいんだろう? 俺もそうだ。だから分かる。お前は、マーラーを殺すべきじゃない。」


 ザァメンは喋りながらも攻撃の手を緩めない。僕の鎧に次々と傷が重ねられていく。


「もとの世界では全くモテなかった俺たちが、これだけ好き勝手できるんだ。童貞を卒業する見込みもなかった俺たちがだぞ。この世界では女だって選び放題だ。もとの世界では犯罪だったが、ここでは少女も好き放題できる。これほど愉快なことはないだろう。」


 ザァメン、お前は正しい。認めよう。僕とお前は似ている。


「俺と組め。ロリイーター。この世界の楽しみ方ってやつを教えてやる。この世界の少女で遊び尽くそうじゃないか。」


 なんて魅力的な提案なんだ。この世界の少女たち全てを自分のものにできたらどれだけ楽しいだろうか。


 ――だが、ザァメン、お前は見誤っている。


 僕がどれほど童貞かを。


 童貞は女の子の涙に弱いのだ。


 マーラーはミーナを泣かせた。お前はそんなクソマラ野郎の肩を持つ。それだけでお前と戦う理由としては十分だ。ぶっ殺してやる。

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