第63話 勇者

 その勇者パーティーは全員女性で、残る二人は服装から魔法使いと僧侶であることが伺えた。


 勇者は部屋一面の蜂の巣を見回して、


「魔王、私達と勝負だ! ここは場所が悪い、ついてこい!」


と言って部屋から出ていった。


 僕は仕方がないと思いながら立ち上がり、疲れ果てて眠ってしまったミーナを寝室に運んで寝顔を眺める。やっぱりミーナは可愛いなあ。



 しばらくミーナのうなじに生えたうぶ毛の本数を数えていると、1000本を超えたあたりで勇者がやってくる。


「魔王! 逃げるな! 私と戦え!」


 えぇ……だって僕、魔王じゃないし……。


 全く、本物の魔王であるノアはどこにいるんだ?


 さすがにこの部屋で戦うとミーナに被害が及ぶ可能性があるため、僕は勇者パーティーと一緒に城の外に出る。


「このロリコン変態魔王め! 死ね!」


 と言って勇者が右手を掲げると、勇者の背後に無数の魔法陣が展開され、そこから剣が射出されて僕を射抜く。


 鎧がうまく弾いてくれた剣もあるが、何本か鎧の隙間から僕に突き刺さってしまった。しかしノーダメージだ。


 それにしてもザーメンと同じく、ロリコンという単語もこの世界に来てから初めて聞いた気がする。もしかして勇者も転生者なのか?


 勇者が金ピカの剣を手に距離を詰める。その背後では魔法使いがなにやら詠唱を開始したのが見えた。


 ――仕方がない、やるか。


 僕は鳥が羽ばたき始めるように、背中からブチュリと触手を6本出す。


 僕の体を貫く剣を抜いて、勇者に応戦する。


 鋭い剣戟けんげきが交差し、僕の触手が次々と切り裂かれるが、ブチュブチュと新しい触手を生やして対応する。


 ついでに魔法使いが雷をガンガン落としてくるが、そっちは別に痛くもないので無視だ。僕は勇者に集中する。


 ――僕ならできる。


 ――僕ならば、この勇者の鎧をぎ取れる。


 裸にして無力化できる。


 僕の触手が勇者の胸当てをぎ取り、下着を引き裂く。勇者の片乳が露出する。勇者本体とは違ってあまりぐいぐいと来ない小振りな胸だ。


 ――見えた!


 僕の頭が綺麗な桜色で塗りつぶされると同時に、勇者の攻撃が僕の胸を捉えて、山2つ分くらい吹き飛ばされる。


 ……しくじったな。 


 僕は山にできたクレーターからむくりと起き上がると、急いで城へと戻った。



 城に戻ると、勇者パーティーは全員裸にかれて魔法で束縛されていた。どうやらノアが片付けたらしい。


「何をやっとるんじゃ、お前は。」


とノアに責められるが、元はと言えばノアが勇者パーティーの侵入を許したのが悪いのでスルーして勇者の裸を拝む。なむなむ。

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