第17話 旅立ち
触手を振り上げた僕はそのまま僕自身に叩き下ろす。
ベチャァ!という大きな破裂音が鳴り響く。
「ドゥティ……?」
ミーナはきょとんとしている。
別に痛くもないのだが、これはけじめだ。ミーナが殺してくれと言うのは半分は僕のせいでもある。
僕にハンバーグ触手が生えた時、普通にミーナに触っていればよかったのだ。僕は「犬じゃないじゃんきもい。近寄らないで」とミーナに嫌われることを恐れていたのだ。
ミーナを信じることができなかったのだ。
半分は僕のせいとはいえ、ミーナを殺すなんてクソ喰らえだ。
それならばミーナ以外の世界を滅ぼす。
とはいえ僕は魔王でも何でもないので実際に世界を滅ぼしはしない。でもミーナをここから連れ去ることはやる。
僕は森の中からザクロ満載のお手製台車を持ってきた。ミーナをこれに乗るように促す。
「わ、なになに、これに私が乗るの? でもなんかいっぱい乗ってるよ? リコの実、じゃなさそう。」
ミーナはザクロの形や匂いを確かめている。
「ドゥボ! ドゥボ!」(乗って!乗って!)
「わ、わかったよ」
ミーナはザクロの山に埋もれる。
僕はそのままミーナが落っこちないように台車を押して加速する。森を駆けて邪魔なものは蹴散らし村から遠く遠く離れる。
「風がっ、すごい! 速い!」
とミーナがはしゃいでいる。ミーナの髪の毛が鯉のぼりのように真横に流れる。
――僕たちは今自由になったんだ。
まだまだこんなもんじゃない。
ミーナは村から離れ、僕は友達ができた。
僕たちは自由だ。
何だってできる。
僕はさらに加速する。
ザコウルフを轢き殺し、崖からジャンプして空を飛びザクロを撒き散らしながら着地してまた駆ける。
――このまま遠くへ行こう。
二人で旅をしよう。
ミーナは笑いながら「いけいけ!」と叫ぶ。
そうだ。
何者にも僕たちは止められない。あのクソったれの村から逃げ出すのだ。
これから数々の困難にぶち当たるだろう。僕も、ミーナも。それでも、ミーナの笑顔を見ていると何とかなるように思えた。
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