第6話 お返しの結果

 次の日。今日も今日とてミーナを待つ。


 昨晩はザコウルフの肉をたらふく食べただろうか。


 もし僕の分を持って来てしまっていたらどうしよう。無理やりにでも口にねじ込んでしまおうか。


 僕に半分くれたとしてもミーナがお腹いっぱいになる程ザコウルフを狩り尽くそうか……などと考えていると、ミーナがやって来た。


 木のツタを足で確認しながら、危なげな足取りでゆっくりと歩いてくる。

 

 今日も可愛い。変な人に襲われやしないだろうか。危険なのは人だけではない。モンスターもだ。今も何かがミーナのことを狙っているかもしれない。

 

 やはり僕が守ってあげなくてはならない。


 ミーナが鼻をくんくんさせている。


「ヌェチャ……」

「あ、ドゥティ。おはよ。」

「ヌェチャ!」

「今日も元気そうでよかった。これあげるね。」


と言ってミーナは野菜の屑を手のひらに乗せて差し出す。


 よかった、ザコウルフの肉は全部食べてくれたのだろうか?


「ごめんね、私はお肉もらえなかったんだ。昨日はすごいいい匂いがして……食べたかったなあ。」


 どういうことだ?肉がもらえなかった?


 予想外の出来事に、僕は言葉を失った。


 なぜた?


 可能性としては3つあり得る。


 村全体として昨日は肉が配られなかった。

 ミーナの家に肉が配られなかった。

 ミーナの家には配られたが、ミーナの家の中で彼女は肉をもらえなかった。


 どれだ? ミーナは昨日はいい匂いがしたと言っていた。1つ目はないだろう。そうすると2つ目か3つ目だ。


 もう面倒臭い、いっそのこと村を滅ぼしてミーナだけ連れてどこかに行ってしまおうか。


 僕の中にドス黒い感情が渦巻く。


「あれ、ドゥティ? どうしたの?」


 ミーナの無垢な表情を見た瞬間、僕の中のドス黒い感情は霧散した。そうだ、冷静になるんだ。


 連れ去ったところで僕はミーナには触れない。うっかり吸収してしまったら目も当てられない。


 会話もろくにできないこんなクソったれと一緒にいてもミーナは幸せにはなれないだろう。


 獲物は狩ってこれても、料理だってできるか怪しい。


 他の街に行ったとしても一緒に街の中に入ることすら叶わない。


「ドゥボ」


 僕はもそもそと野菜屑を食べる。


「おいしい?」

「ドゥボ」


 これは情報を集める必要があるな。


 ミーナの為にも。

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