46・誰も居ない王国
王子…いえ、既に国王となったその少年は、ただ、ひとりきりでした。
「ぼくは、何の為に居るのだろう」
少年は豪勢な玉座に腰掛け、そう呟きます。
ねぇ、と呼びかける先にあるのは、鎧を纏った骸骨が一組。
少年を最期まで守り、闘った騎士の亡骸です。
騎士は、国王を倒そうとする敵の騎士を倒し、そして、相打ちになったのです。
亡骸を葬ってやる事も思いつきませんでした。
だって、この騎士が居なくなったのなら、少年は、本当に一人きりになってしまうからです。
少年は玉座から立ち上がります。
汚れはて、壊れかけた王の間を歩き、骸骨へと近寄ります。
「ねぇ」
手を伸ばし、骸骨を抱き上げました。
「そろそろ、目覚めてよ」
願い。
騎士は誓いました。
国王を失い、混乱する国の中。殆どの騎士が、城に仕えるものたちが、この国を見捨てて降伏していく中。
新たな国王となった少年の前に跪き、誓ったのです。
永遠の忠誠を。
永遠の守りを。
少年の傍らに永久に存在し、永久に守り続けると誓ったのです。
骸骨の茶色い肌に頬を寄せ、少年は軽く瞳を閉じます。
思い出すのです。
少年に永遠を誓った騎士の言葉を。
「ぼく、ちゃんと覚えてる。
永遠だって、ずっとだって、そう言ったの、覚えてるから」
だから、ぼくは永遠になる。
この誰も居ない王国で、世界のすべてが滅びきっても、ぼくはお前と共に永遠になる。
少年は玉座へ戻ります。
玉座に深く、深く腰掛けます。
茶色の頭蓋骨を、膝の上に抱いて。
誰も居ない王国で、少年は真っ直ぐ、その視線を真っ直ぐ、未来でも、何処でもない…例えて言えば永遠に、向けたのでした。
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