5・手


 大好きだった人が居ました。


 だけど彼は居なくなってしまいました。




 彼は死んでしまったのです。



 私は哀しくて、哀しくて。泣いてばかりいました。




 彼は飛行機事故で亡くなりました。

 彼が乗った飛行機は、空中で爆発したのです。

 彼も含めて、全ての人間の身体は、何一つ残りませんでした。









 泣き疲れて眠る私の耳に、ふと、その音が届きました。



 窓を叩く音です。






 私は顔を上げて窓を見ました。






 真っ黒に焦げた手が、そっと、窓を叩いています。

 そのしなやかな、優しい動き。

 彼です。

 帰ってきてくれたんだ。

 手だけになっても、私の元へ。




 私は窓を開きます。真っ黒に小さくなってしまった彼の手を、胸に抱き締めました。




 嬉しい。

 これで、これで、ずっと一緒だ。



 





















 …翌日。





 一人の女の死体が見つかる。

 首を絞められ、殺された女の死体。




 奇妙な事に、彼女の身体には黒い汚れが大量に残っている。



 犯人はまだ見つかっていない。

 

 

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