4・子殺し


 テレビのアナウンサーが、母親によって虐待され、殺された子供のニュースを読み上げている。


「まったく分からんね」


 俺は呟いた。

 俺の横に座り込み、絵本を読んでいる娘を見ながら、真後ろで夕食の準備をしている妻に話しかける。


「自分の子供を殺すなんて、まったく、どういう気持ちなんだか」

「そうね」


 妻が頷いた。




「私もどういう気持ちか分からないわ」



 まったく普段と変わらぬ声で返答した妻が、続けた。




「試してみましょうか」






 試すって、何を?





 その疑問に振り返った俺の視線の前に、妻が立っていた。

 手に、包丁を持って。





 包丁を持つ右手を持ち上げて、妻は、幼い娘の頭に刃を叩き付けた。

 悲鳴さえ無かった。

 娘は顔半分を破壊されたような状態になり、そのまま、倒れた。





「殺してみたけど、よく分からないわ」

 でも。

「いい気持ちじゃないのは、確かね」




 妻は俺にそう伝えると、キッチンへと戻っていった。




 俺は、動かなくなった娘の身体を呆然と眺める。




 テレビで、アナウンサーがニュースを読み上げている。


 俺の妻と娘も、明日、ニュースで読み上げられるのだろうか。




 ぼんやりと、そんな事を考えた。

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