桜咲く!ハイスクール武士道(旧タイトル『美少女剣士と野獣』)
純太
第一章 美少女剣士と野獣
第1話 美少女剣士がやってきた!
道場内に
汗を吸った防具のにおい、床にかけられているワックスのにおい、竹刀と竹刀がぶつかることによって生じる
今、道場内では、剣道部の女子部員たちがを
「テァーーーーーーー!」
「面ッ、胴ッ、小手ァーーーー!」
気合いの入った掛け声が道場内に響く。
踏み込んだ足でドンッと床を鳴らす音。面を打つ音、胴を打つ音。パンッパンッと竹刀のぶつかり合う音。音、音、音……。
桜坂高校剣道部は、近年、にわかに実力をつけ、強豪校の一角となったが、いわゆる剣道の名門校ではない。そのため、剣道場は狭く、男子と女子が合同で練習することはできない。月火水は女子が使い、男子は体育館を使う。木金土は男子が剣道場を使い、女子は体育館を使う。そういう割り当てになっている。
「やめーーーー!」
と3年の
開け放たれた道場の入口から、桜の花びらが舞い込んでくる。
季節は春、新入学の時期だ。
ブレザー姿の少女が入口に立って、道場内を見ている。
スラリと背が高い。色白の美人だ。目は切れ長の二重。左目尻の下に色っぽいほくろがある。鼻筋が通っていて、唇は薄い。黒髪を後ろで結んでいるが、目力の強さと相まって、それはポニーテールというより幕末の志士のように見える。
「見学ですかぁ?」
と沙織が笑顔で聞くと、
「いや、そうじゃない」
と少女は答えた。
「男子の主将はどこにいる?」
自分が敬語で話しかけたのにタメ口で返されたことに軽くイラッとしながらも、沙織は笑顔を保って言った。
「うちの主将、ちょっと変わった人で、今どこにいるか分からないんだよねぇ。副主将だったら、男子の部室にいると思うよ。2年の
沙織がそう教えてやると、
「そうか。すまない」
と少女は一礼して去った。
その姿が見えなくなると、道場内で女子部員たちがささやき合った。
「今の、
「八雲中学の?」
「そうそう。全国中学校剣道大会で二連覇した……」
「うちに入学したと聞いてたけど、あの子がそうなんだー」
「感じ悪いよね」
「ほんと。何、あの態度。自分が強いと思って調子に乗ってるんじゃない?」
咲にはそんなつもりはなかった。
超がつく照れ屋なだけだ。
咲の父である
その結果、咲は自分のことを「ボク」と呼ぶクセがついてしまっている。おかしいのは分かってるから、高校に上がったのを期に「私」に改めたいのだが、妙な自意識が邪魔して、それができない。元々が極端な照れ屋である上、そういう葛藤があるために、ついぶっきらぼうなしゃべり方になってしまうのだ。
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