第3話 神様は不公平だ

 ある夜、美羽は風呂の湯船で膝を抱えながら、

「はぁ……」

 と重い溜息をついた。


 咲は最強だ。剣士としても、女としても。


 高校1年とは思えない身体能力と抜群のセンスを持ち、それでいて体育会系ブスではない。スレンダーな色白の美人で、女の目から見ても色気がある。


 しかも、これは咲と身近に接しているうちに分かってきたことだが、咲はその実力と美貌に加えて、ボクッ子キャラ、天然キャラな面まで持ち合わせている。美羽の目から見ると、あんた一体、どんだけモテたいの? という感じだ。


 ずるいよ、と美羽は思う。


 神様って本当に不公平だ。

 あの子にはすべてを与え、あたしには何も与えてくれなかった。


 咲の父親は剣道日本一、母親は美人としても有名な華道の先生だと聞いている。そんな両親の下に生まれていれば、あたしだってもっと剣道が強かったし、美人に育っていた。これほどの素質の違いは、努力では埋めようがない。


 美羽は一度、その不満を本人にぶつけてみたことがある。


「咲はいいよね。剣道強いし、美人だし。そりゃ、涼介先輩にも好かれるよね」


 それに対して、咲はキョトンとしながら、そうかな、と言った。


「涼介はボクにそんな感情を持ってないと思うが。ボクにもそんな気はないし」


 ムカつく、何その余裕!

 咲のこういうところがまた、男心をくすぐるに違いない。


 湯船に顔を半分まで沈めながら、美羽は思った。


「あたしって、存在している価値あるのかな……」

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