第3話 神様は不公平だ
ある夜、美羽は風呂の湯船で膝を抱えながら、
「はぁ……」
と重い溜息をついた。
咲は最強だ。剣士としても、女としても。
高校1年とは思えない身体能力と抜群のセンスを持ち、それでいて体育会系ブスではない。スレンダーな色白の美人で、女の目から見ても色気がある。
しかも、これは咲と身近に接しているうちに分かってきたことだが、咲はその実力と美貌に加えて、ボクッ子キャラ、天然キャラな面まで持ち合わせている。美羽の目から見ると、あんた一体、どんだけモテたいの? という感じだ。
ずるいよ、と美羽は思う。
神様って本当に不公平だ。
あの子にはすべてを与え、あたしには何も与えてくれなかった。
咲の父親は剣道日本一、母親は美人としても有名な華道の先生だと聞いている。そんな両親の下に生まれていれば、あたしだってもっと剣道が強かったし、美人に育っていた。これほどの素質の違いは、努力では埋めようがない。
美羽は一度、その不満を本人にぶつけてみたことがある。
「咲はいいよね。剣道強いし、美人だし。そりゃ、涼介先輩にも好かれるよね」
それに対して、咲はキョトンとしながら、そうかな、と言った。
「涼介はボクにそんな感情を持ってないと思うが。ボクにもそんな気はないし」
ムカつく、何その余裕!
咲のこういうところがまた、男心をくすぐるに違いない。
湯船に顔を半分まで沈めながら、美羽は思った。
「あたしって、存在している価値あるのかな……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます