第10話 合理的パワーアップ
翌日。いつものようにコソコソとダンジョンで弓チク戦法を決行していたその時。
「ん……? あれはドロップアイテムか?」
モンスターを倒すと、時々アイテムを落とすことがある。それがいわゆるドロップアイテムだ。
そして、そのドロップアイテムの中でも希少なものはレアドロップと呼ばれ、高値で取引されるものもある。
今回のそれは腕輪だった。
「初めて見るからレアドロップみたいだけど、どうやって使うんだ?」
――
破邪の腕輪 レアリティ:レア
この腕輪をはめた者の攻撃はモンスターにのみ命中する。
――
んん? この効果、ほとんど意味がなくないか?
<観察眼>が間違っている……わけではなさそうだ。
まあ、役に立たなくても売却できるし、持ってればいいか。
そんなことよりレベルアップだ。ようやく8層に続く階段を見つけたし、今日は今まで以上に強い敵を狩れるぞ!
いつも通り<第六感>を発動してモンスターの位置を特定する。……お、いたいた。
「いきなりで悪いが、僕の成長の糧になってくれ!」
念のため、矢を二発撃っておく。数秒後、2発目が命中してモンスターが絶命した。
8層のモンスターも2発入れればなんとか倒せるようだ。
ただ、1体倒すのに2回矢を撃たないといけないのは面倒だな。
ここまでは順調に成長できたけど、敵が強くなっていくごとに効率はどんどん落ちていくだろう。
何か、打開できる方法を見つけないとな……。
――
レベルが11に上がりました。
スキル<三倍>を習得しました。
――
お、レベルが上がった。今回のスキルはなんだ?
――
<三倍>
矢を放つ瞬間、矢の数が3本に分裂する。
ただし、軌道は3本ともバラバラになり、オリジナル以外の矢は動きを止めた時点で消滅する。
――
おお……またなんとも癖がありそうなスキルだな。
一見すると攻撃力3倍だが、オリジナル以外の矢は軌道が変わってしまうので、正直見掛け倒しにしかならないだろう。
それに、オリジナル以外の矢は消えてしまうので、補給という意味でも役に立たない。
使うメリットがよくわからないスキルだ。
僕以外には。
「【必中】があるから軌道が変わっても絶対当たるじゃん!」
ってことは僕にとっては攻撃力3倍バフってことだ! 火力に行き詰まったタイミングでこのスキルはありがたい!
「よし、さっそくやってみるか!」
僕は近くにいるモンスターに向けて、弓を思い切り引く。
すると、セットされている矢の横に、2つの矢が複製された。
「名付けて……トリプレットアロー!」
3本の矢を放つと、少ししてモンスターが絶命したのがわかった。
「よし! 8層のモンスターも一撃で倒せるようになった!」
たまらない。弓を引くたびにモンスターが倒れていく快感。
何より、【必中】がなければどれも大したことのないスキルで強敵を倒すことの優越感が半端じゃない。
僕はさらに8層のモンスターを蹂躙していく。弓を引く手が止まったのは、しばらくして9層に続く階段を見つけた時だった。
「9層か……正直、まだ全然負ける気がしないな……」
9層に向けて<第六感>を働かせると、下には今よりも一回り強いモンスターたちの気配を感じとった。
うわー、こんな奴らと戦ったら、ワンミスで即死だな……さすがにちょっと冷静になった。
だが、強いということはそれだけレベルアップの効率もいいということだ。ここで退くのは合理的じゃない。
「……とはいえいきなり特攻は怖いし、ここから弓チクで様子見するか」
僕は階段の上から9層のモンスターに向かって、矢を放つ。
3本の矢はモンスターに直撃したが、まだ命を奪えていない。よし、もう一回!
――
レベルが12に上がりました。
スキル<貫通>を習得しました。
――
あ、今ので行けたっぽい。さらにレベルアップ。
どれどれ、新しく取得したスキルは……
――
<貫通>
敵に刺さった矢が、敵の体を貫通するようになる。
――
なんだこれ? 要するに、今までは敵の体に刺さっていた矢が貫通するようになったってことか?
用途が全く想像つかないが……いや、ちょっと待てよ?
「これ、【必中】と組み合わせたらめちゃくちゃ強いんじゃ?」
試しに、僕は再び弓を引いて矢を放ってみる。
今回は矢の軌道が見てみたい。
矢は僕の手から放たれると、そのまま下の層に行き、直進し、角を曲がる。
対象のモンスターの位置に到達すると、矢じりがモンスターの体に刺さる。大事なのはここからだ。
矢はモンスターの体を貫通すると……また踵を返してモンスターを襲った。
「やっぱりそうだ……モンスターの体を貫通した矢は、【必中】の効果でまたモンスターに向かっていくんだ」
さすがに一撃目と同じだけの威力とはいかないが……実質的には二連撃。
矢が3倍になり、2撃目まで追加。もしかして、今日だけで5〜6倍は強くなった?
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