第56話 合理的試し撃ち!
「そっか……床を貫通させるっていう発想はなかったな……」
<貫通>があるから、モンスターの体だけじゃなくダンジョンの壁や床もすり抜けられるというのは自然なことだ。
だが、驚いたのはそこではない。ツイスタリアから放たれた矢は、嵐のような強風を纏い、フロアのモンスターたちを蹂躙していった。
これが出来るなら、弓チク戦法の幅はかなり広がる。今までは矢で一体ずつ倒さなければいけなかったわけだが、これなら一気にモンスターを吹き飛ばすことが出来る。
「まだモンスターは残ってそうだし……もう一回!」
僕は再び弓を引き、地面に向かって矢を放つ。
突風がフロア中に吹き荒れ、矢が床を貫通していく。しっかり方向を定めたことで、放った一撃の威力はさっきよりもはるかに強い。22層のモンスターたちは風に巻き込まれ、次々と倒されていく。
「す、すげー!! ツイスタリアさんマジハンパねえ!!」
僕が正面から戦ったら即死するようなモンスターをあっさりと薙ぎ倒していく一本の矢。僕のレベルはもちろんだが、ツイスタリアがそれを底上げして射撃の威力にフィードバックしている。
矢は22層の床を突破し、23層のモンスターを再び吹き飛ばしていく。
――
レベルが25になりました。
スキル<バウンド>を習得しました。
――
矢が勝手に格上のモンスターを殲滅してくれるから、すぐにレベルが上がっていく。
まるで洗面台に栓をして水を溜め、水が満ちたところで栓を引き抜いたときに出来る水流を見ているような――そんな爽快感でいっぱいになる。
「やっぱり最高だ……ツイスタリア!」
最後に、僕は<慧眼>でツイスタリアを鑑定してみることにした。
――
嵐弓ツイスタリア レア度:レジェンド
この弓で放った矢には以下の効果が適用される。
①<
②<
ツイスタリアの効果は所有者の実力によって変化する。
――
おお! ツイスタリアには効果が2個もあるのか!
一つはさっきまでの攻撃に付与されてきた嵐の効果。そして気づかなかったもう一つは、防御効果。
肉弾戦が考慮されていないアーチャーにとって、自分自身の防御が上がる効果はありがたい。それが伝説のアイテムによる効果ともなればなおさらだ。
「しかも、加護と同じでまだ成長の余地を残してるのか。ますます気に入った」
僕はツイスタリアを大切に抱えて地上へ帰還した。
――帰宅後。ベッドに横たわって改めてツイスタリアを見つめる。
カラーリングや形状。それに独特なオーラ。どれを取っても完璧な、まさに僕好みの合理的な弓だ。
「そういえば……レアリティがレジェンドのアイテムってどれくらいの価値なんだろう」
今まではよくてスーパーレアのアイテムしか手に入れたことしかなかったので、いまいち想像がつかない。
僕はスマホを手に取り、ブレイブストリームで『アイテム レアリティ』で検索してみる。検索結果に出てきたものから、とりあえず1番上の動画を開いてみる。
『こんにちは! 『冒険者ルーキーの学舎』のRumiです! 今回は、アイテムのレアリティについて解説していきます!』
再生されたのは優しそうな女性の声。画面は黒板を模したような画像で、どうやら解説動画らしい。
『皆さんは、アイテムのレアリティには何があるか知っていますか? また、どこまでのアイテムを入手したことがありますか?』
女性がそう言うと、画面にはピラミッドのような図が表示された。
『レアリティはこのピラミッドのようになっており、上に行けば行くほど貴重になり、価格も上がっていきます。まず、1番下がノーマル。その上がレア、さらにその上がスーパーレアです』
それは知っている。問題はそこから上――、
『この動画を見ている冒険者さんは、この3種類のみを覚えておけば大丈夫です。なぜなら、基本はこの3種類のアイテムしか手に入らないからです』
……ん?
『スーパーレアの上のレアリティ、ミシックのアイテムは数年に一度、20層付近で発見されることがあるくらいのレア度で、1個あたり数千万円の価値が付きます。その確率はまさに、宝くじを当てるほどだからです』
ミシックのアイテム1個で数千万!? ってことは、レジェンドは……。
『さらにその上、レジェンドのアイテムは10個に満たない数しか確認されていません。そのどれもが国宝級。価値に換算することはできませんが、軽く数億はくだらないでしょう』
「ツイスタリアが、億……」
数億、という金額に具体的なイメージは湧かない。……が、売れば人生上がりだということはわかる。
『レジェンドのアイテムにそれだけの価値が付くのは、その性能に理由があります。武器系のアイテムであればそれ一つで軍に匹敵する力を誇り、それ以外のアイテムでも国に影響を及ぼすほどだからです』
あれ、もしかして……とんでもないアイテムを手に入れちゃった?
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