第49話 合理的ボスラッシュ!
「英夢くん、なんでここに!?」
「たまたまニュースを見てね。あと未来も見た。ギリギリ間に合ったみたいだね」
飛ばしてきて正解だった。このタイミングで到着しなければ、比奈は確実に死んでいただろう。
この数ーー少なくとも10体以上はいる。これだけの魑魅魍魎に囲まれればプロの冒険者でもひとたまりもないだろう。
「まあ、僕には関係ないけどね」
僕に向かって飛び掛かってくるモンスターたち。僕は手を銃の形にしてバン、というモーションで矢を放ち、全てのモンスターの頭を撃ちぬいた。
まるで風船が割れるような音とともに血が飛び散り、大小さまざまのモンスターの体が倒れる。
強敵相手に逃げ回った後だから、大して強くない敵を相手に無双するのは気持ちがいいな。ボーナスステージに来たみたいだ。
「英夢くん、上!」
比奈に言われて上を見てみると、フォルモの吹き抜けから黒い影が入り込んできた。
「グオオオオオオオオオオオオ!!」
1階に落ちてきたのは、5体のモンスター。人型のものもいるし、四足歩行のものもいる。見た目はバラバラだが、どれもダンジョンでは見たことがない。
「あのモンスター、さっきのコウモリ人間より強そうだよ!」
「コウモリ人間って?」
「さっき英夢くんが倒したやつだよ!?」
「じゃあ大したことないけど……一応見ておくか」
僕は進化した<慧眼>で敵の情報を確認する。
ーー
ファイブ・スローンズ
ダンジョンボス。
人間のレベルで15相当の強さです。
ーー
凄い! 人間のレベルでどれくらいの強さかを教えてくれるのか! かなり便利になったな。
こいつらがダンジョンのボス。レベル15相当ともなるとそこそこの脅威だ。
「比奈、ちょっと待っててね」
エスカレーターを使って1階に降りると、5体のモンスターたちが一斉に僕を視認した。
こいつら、全身のところどころに血が付いている。しかも返り血だ。これは相当な数の冒険者たちを殺してきたな。
「余裕そうだね。『こっちは5人もいるのに、1人で来るなんて状況見えてるのか?』とか思ってる? ……状況が見えてないのはそっちだよ」
僕は一番右にいる四足歩行のモンスターに矢を放ち、後方へ吹っ飛ばした。
テナントの壁をぶち破り、モンスターは絶命した。瓦礫の掛け布団を被るモンスターに、残りの4体はようやく焦り出す。
「グオオオオオオオオオオオオ!」
人型の巨人のようなモンスターが、持っている棍棒を横なぎに振るってくる。まるで有名な寺にある大きな撞木が迫ってくるような衝撃。僕はそれを手で受け止めると、衝撃波がフロア全体に駆け巡った。
今のは、下手したらゴーレムのパンチくらい威力があったかもな。……でも、分かっていれば大したことはない。
「キシャアアアアアア!!」
次に襲い掛かってくるのは、4本腕のモンスター。その手にはそれぞれ剣を持っており、ミキサーのような勢いで剣を振り回してくる。
「悪くないけど……連携が駄目だね。チームで戦うならそこはしっかりしたほうがいいよ」
僕はモンスターが持っている棍棒をグッと掴み、そのままモンスターの身体ごと振り回し、剣を持っているモンスターにぶつけた。
巨体が盾になり、剣を持っているモンスターの攻撃は全て味方の体を切り裂いてしまう。
モンスターが呆気に取られている刹那、僕は2体のモンスターの頭部を矢で吹っ飛ばした。
「さて次は……おっと」
敵の方を見やると、次の敵はスケルトン。放ってきた矢を、僕は目前で掴んだ。
「お前もアーチャーか。ちょっと親近感が湧くけど……そんなに殺気を出してたら当たらないよ」
僕は一歩ずつ、スケルトンに向かって歩み寄る。スケルトンは僕を止めるべく、必死に弓に矢をセットし、放つ。
……が、どれも僕には当たらない。当たり前だ、こっちは1秒後の未来が見えているんだから。
「当たらない矢は何発撃っても意味がないよ。やるなら僕みたいに、一発で仕留めないと」
スケルトンの目前までたどり着いた僕は、一発の<チェインアロー>でスケルトンの体を粉々に粉砕した。
「ギ、ギヒィッ!!」
最後に残ったのはカブトムシみたいなモンスターだが……あまりの惨状に耐えきれなくなったのか、僕に背を向けて空を飛び、逃走を始めた。
「お前、
カブトムシを矢で撃ち落とすと、折れた角と一緒に死体が落ちてきた。
「これで全部か」
他にモンスターの気配はない。ひとまず近くのモンスターは一掃したようだ。
「比奈、終わったよ」
「英夢くん……いつにも増して強いね」
「そういう比奈はいつもより元気がなくないか?」
「あはは、あまりにも凄い戦いだったからビックリしちゃって……ちょっと参っちゃったかも」
確かに比奈は顔色が悪い。まあ、かなり疲れるのも無理はないだろう。
「よし、じゃあちょっと移動しようか」
「移動って……どこへ?」
決まっている。前から行ってみたかった場所。アーチャーにとって最も合理的なスポット。
「
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