第14話 合理的お弁当!
翌日。4限目が終わり、昼休憩の時間になった。
いつものように昼食の用意をしていると、比奈が僕の机を軽く叩いた。
「ねえ、英夢くんは今日のお昼は何食べるの?」
「ん? いつも通りだよ」
僕はコンビニの袋に入ったアイテムたちを机の上に展開する。
プロテイン。マルチビタミンのサプリ。栄養補給のためのゼリー。これが僕の昼飯だ。
「……本当にいつもこれ食べてるの?」
「そうだよ。食事は栄養を摂るためのものだから、さっと済ませて休み時間は寝たほうが合理的だからね」
そう言うと、比奈は少し苦笑いをした後、咳払いをした。
「……ねえ。よかったらなんだけど、一緒にお昼ご飯食べない?」
「別に構わないけど、見ての通り僕はすぐ食べ終わるよ?」
「大丈夫。そんなこともあろうかと思って、英夢くんのためにお弁当を作ってきたの!」
比奈の……手作り弁当?
屋上に移動して一角に二人で座ると、比奈が弁当の包みをパッと開いた。
「じゃーん! こんな感じ!」
蓋を開けると、そこには色とりどりの食材が所狭しと並べられていた。
卵焼き、唐揚げ、シュウマイなど、定番を中心に様々な食材が入っている。
「……すごいな。これ比奈が作ったのか?」
「基本は冷凍食品だけど、卵焼きは自分で焼いたよ! さあ、食べて食べて!」
促されるまま、僕は比奈が作ったという卵焼きを箸で摘む。
綺麗な黄色だ。それに形も綺麗で、食欲がそそられる。
卵焼きを口に運び、咀嚼した瞬間。
「……!」
美味い。ふんわりとした食感とともに、甘塩っぱい味が口の中に広がる。
舌触りはすごく滑らかで、卵のいいところが最大限活かされている。
「これ、めちゃくちゃ美味いな! 比奈って料理上手いんだな!」
「そう? 喜んでもらえたならよかった。英夢くん、いつも一人でささっと済ませてるから、たまには温かいものを食べてもらいたいと思って」
僕のために早起きしてこんなに美味しい弁当を作ってくれるなんて……なんていい子なんだ。
こんなにしてもらって大丈夫かな? 僕はときどき勉強を教えるくらいしか出来ていないけど……。
その時、比奈のスマホから音が鳴り、通知欄が表示された。
それはブレイブストリームの通知で、『ミライ☆on airが配信を始めました』とある。
「ミライって……あの?」
「え、英夢くんもミライ知ってるの? ちょっと意外かも」
「昨日、一本だけ動画を見たんだ。有名なのか?」
「そうだよ! ミライちゃんは冒険者としての実力もあって、配信も人気だし、モデルもやってるすごい人なんだから!」
たまたま動画を見ただけだから知らなかったけど、すごい人だったらしい。
「この前の配信もアーカイブで見たんだけどね……ゴーレム倒せなくて残念だったな。でも、ミライちゃんならきっといつかやってくれると思うんだよね!」
「そういえば……そのゴーレムについてなんだけど」
「ゴーレムがどうかしたの?」
「昨日、そいつを倒したんだ」
そう報告すると、比奈はご飯を詰まらせて咳をし始めた。
「え!? 英夢くんがゴーレムを倒しちゃったの!? もしかして、一人で!?」
頷くと、比奈はさらに驚く。
「この前二人で遊びにいった時もそうだけど……英夢くんの話ってとんでもなさすぎるよね」
「信じられないか?」
「ううん。信じる。でも、あんまりこの話は他の人にしないほうがいいかも。驚かれるから。私も黙っておくね」
「ありがとう。比奈に伝えてよかったよ」
そう言うと、比奈は嬉しそうに笑った。
さて、次はどれを食べようかな……やっぱり王道の唐揚げを……。
「ごめんなさい!!」
食べ進めようとした時、近くから大きな声が聞こえた。
「な、なに……?」
「ちょっと待って。ここから感知してみる」
僕は<観測者>を発動し、屋上全体を感知してみる。
声の主はすぐに見つかった。
「ごめんなさい! でも、もうそれ以上は出せないんです!」
「は? お前、俺たちを用心棒にしておいてその態度かよ?」
大声で泣きながら土下座をしているのは、痩せ型の生徒。僕と同じ、『見ればわかる弱そうな奴』だ。
そして、彼が土下座している対象は3人の生徒だった。制服に付いている学年章からして――2年生か。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます