第2話
時は少し遡る。
俺は生まれながらにして微量ながら魔力があった。
魔力がある人間は貴重な存在だ。
何せ数十人に1人しか魔力を宿せないといわれているからだ。
だが俺の場合、魔法を使える程の魔力量がなく、折角魔力があっても役立てられなかった。
因みに無理矢理魔力を用いようとしても、簡単な火おこしや水の精製・・・・スプーン一杯の水を得ようとしても、魔力がすぐに枯渇し気絶してしまう。
だから俺の魔力は役に立てず、宝の持ち腐れだった。
やがて誰も俺が魔力持ちだからと特別視しなくなり、むしろお荷物状態だった。
それに幼少の頃から俺は身体が弱く、毎日のように気を失っていたようだ。
尤も今もそうなんだが。
しかし、俺は自身の身体が弱いから気を失っていたと思っていたのだが、それがそうではなかった事に気が付くのは、冒険者になってすぐの事だった。
・・・・
・・・
・・
・
幼い頃の俺はしょっちゅう外で気を失ったようだ。
幼いながらも薬草採取に出かけ、草原の真っただ中で気を失うという・・・・街の周囲には草原があり、そこには魔物が滅多にやってこないので安全なのだが・・・・それでも気を失っていい訳ではない。
あの頃の俺は何で気を失っていたのかなあ?
【ごめんなさい!それ私のせい!!】
うん?なんか聞こえた気がするけれど、周囲に誰も居ないし気のせいだよな?
最近よく聞こえるんだよ。まさかの幻聴?
【まだ私達の声が思い通り届かないのね!早く自分の意志で聞こえるようになるといいのに!】
今日はまだ聞こえるな。これ、幻聴じゃなく精霊の声か?
実際気まぐれで精霊が俺に語り掛けて来る事がある。
その時は俺が地面に伏している時限定なので、それに活路を見い出せないだろうか。
・・・・周囲には誰も居ない。いよいよ俺も追い込まれたか?
聞こえる幻聴は無害だからいいが、俺の願望なのだろうか、女性の声がする。
【いや、儂もおるでな、女だけじゃないぞい。】
今度は男性の声だ。無意識に父親を求めていたのだろうか?
俺には父親も、母親もいない。幼い頃戦争で住んでいた街が破壊され、その時両親は死んだと聞かされていた。
ぶっちゃけ両親の事は思い出せない。
おっと時間がない。そろそろこの辺りでいいか。
俺は改めて周囲を見渡す。誰も居ない。
俺は地面にうつ伏せで寝そべり、顔もそうだが、両掌も地面に触れるようにした。
なるべく肩もくっつけた方が都合がいいようなのでそうしているが、長時間地面にこの格好、地味にきついんだよなあ。
俺が地面にうつ伏せになった途端、身体に何かが走り抜けた。
地面には地脈というのがあって、それと俺が魔力で繋がった【らしい】。
何故【らしい】というかと言えば、俺にはわからないからだ。分かるのは・・・・
『本日もありがとうございますヘリット・ヘイマンス様。これより活動開始致しますわ。』
水の精霊アクアさんだ。俺が幼い頃、草原で傷つき消えかかっていたアクアさんを偶然助けた事があったらしい・・・・覚えていないが。
『あの頃のお話で御座いますか?』
あー、うん、俺あの頃はまだ小さかったからさ、いまいち覚えていないんだよ。
『あの時は私も焦っておりましたから、ヘリット・ヘイマンス様には大変おつらい経験をさせてしまいました。つまり私は、人の魔力をちょっとお分けしてほしいと草原をさまよっていたのですわ。その時見つけたのがまだ幼いヘリット・ヘイマンス様でしたの。そしてヘリット・ヘイマンス様の魔力は一等美味しく、かつ効果が高く感じまして、それに私は時間がございませんでしたので、後先考えずに魔力をほんのちょっとお分けして頂きましたの。まさかほんのちょっとで気を失うとは思ってもみませんでしたので、あの時は本当に申し訳ございませんでした。』
そう言って姿を現したアクアさんがそっと抱きしめて・・・・覆いかぶさってくるが、うーん、ちょっと冷たい・・・・
俺はこの時、今のようなうつ伏せ状態に倒れてしまったらしい。
その結果偶然地脈と繋がって、他の精霊もアクアさん同様俺の魔力を求め、俺の所にやって来たらしい。
そしてその後は俺の周囲に精霊達が群がり、凄い事になったようだ。
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