第19話
「ダンジョンについて知りたい?」
俺がエレンに聞くと、オウム返しに聞き返された。
「エレンにとっては常識かもしれないが、俺はダンジョンは今まで縁が無かったし、関心もなかったから全く知らないんだ。」
今回の依頼が無ければ、果たして俺はダンジョンに潜っただろうか。
地面に突っ伏していれば精霊達が森の奥深くまで足を延ばし、高ランクの冒険者でないと討伐出来ないような魔物を仕留めて素材を回収してくれる。
ダンジョンって冒険者にとって宝の山らしいが、その分リスクを負う。
俺はリスクを負わなくても精霊達が何でもしてくれるから、今の暮らしに不自由を感じる事なく、日々暮らしていける。
あれ?もしかして俺精霊に依存している?
『そんな事はありません。むしろ私達の方こそヘリット様に依存しているのですわ。毎日大変美味な魔力を頂いているのですから、むしろ御礼としては少ないと思いますわ。』
水の精霊アクアさん。
彼女はいつも俺に感謝の意を表してくれる。
それに相反するのが、風の精霊シルフさんだ。
『ヘリットのくせにうじうじ考えない!あんたは私達に魔力を提供する。私達は魔力の見返りに魔物を討伐、素材を提供する。分かった?分かったならさっさと魔力を渡しなさいよね!』
俺は精霊の声を聴いていた。そのせいで折角エレンがダンジョンについて説明してくれていたのに、その多くを聞き流してしまっていた。
「・・・・と言う訳で基本宿泊は安全地帯で行う。ヘイマンス殿であれば土の精霊が地脈からなんでも取り寄せてくれるだろうから、寝具を頼んでおくのがいいだろう。」
しまった。俺はこんな大事な話を聞き流してしまった。
冒険者にとって危険は常に付きまとう。
危険を回避、若しくは最小限にとどめる努力を惜しんだり軽視すれば、自身と周囲の死に直結する。
こんな基本的な事が出来ないなんて、冒険者失格だ。
『申し訳ありません。精霊の知識になりますが、後で説明します。』
火の精霊サラマンダーさんがフォローしてくれるようです。
『儂の責任重大じゃが、ダンジョン内は地脈が複雑でのう。想定しておる様な地上とダンジョンの行き来はちと難しいぞい。尤も最初から持ち込んでけばおけば儂がちゃんと運ぶぞい。それに難しいとはいえ、できなくはないのぢゃ!』
ちょっと安心。でも地上と違い、ダンジョンの地脈は複雑なんだ。知らなかったよ。
この後、俺が話し半分しか聞いていなかった事を知ったエレンだが、
「復習を兼ね、もう一度説明しよう。」
今度は俺の隣に腰掛け、何故か手を取って説明してくれたが、これ別の意味で話に集中できないぞ。
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