第48話

【ヘイマンス】


「うわああ!」


 俺は羽交い絞めにされたまま強引に投げ飛ばされた。

 普通こんなに飛ばないと思うが、恐らく10メートルは投げ飛ばされたと思う。

 スキルか?それとも身体強化の魔道具でも装着しているのだろうか。


 まあ俺は無様に飛んでいき、当然ながら終わりがある訳で・・・・そのまま床に激突、転がった所までは覚えているんだが・・・・ゴン!

 俺の意識は此処までだった。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


【エレン】


 私は急ぎ部屋に入ったが、ヘイマンス殿が見当たらない・・・いた、床に倒れているようだ。

「ヘイマンス殿!」

 急ぎ駆け付けたがどうやら意識がないようだ。


 その瞬間扉は完全に閉じられ、奥に控えていたであろう魔物が動き出した。

 何か武器は!

 だがない物はない・・・・精霊達に動きがない。

 そこでふとヘイマンス殿の腰に目がいった。

 短剣!

 ヘイマンス殿は使わないが・・・・調理中に使うぐらいしか利用していない、所謂包丁代わりにしている短剣があった!


 本来であればいけないのだろうが、そんな事を言っている場合ではない。

 私はヘイマンス殿の腰に下がってる短剣を抜き、手にした。

 その瞬間魔物が飛びかかってきた!


 私は咄嗟に短剣を突き出した。


 魔物に深く突き刺さった短剣は、あまりにも深く刺さり過ぎたのか、抜く事が出来ない!

 急所を正確に突いたと思うが、どの魔物か確認していなかったからそれも怪しい。

 そう思っていたが、最後のあがきと言えばいいのか、魔物が暴れ、私は避ける事が出来ず・・・・避ければヘイマンス殿に被害が及ぶ・・・・後方へ吹き飛ばされた。


 うう・・・・どうやら深手を負ったようだ。

 腹付近に魔物の攻撃を受け、そのまま床にたたきつけられた感じだ。

 起き上がろうとしたが駄目だった。

 そして血を吐いたのまでは記憶しているが・・・・意識が遠のく感覚・・・・


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・

【再びヘイマンス】


 はっ!何かがぶつかったようで、俺はそのお陰で意識を取り戻したようだ。

 ぶつかった何かを見ると、血まみれのエレンだった。

 ・・・・どうなっている?

 ふと見ると魔物がこちらにやってくるのが見えた。


 不味い!俺は運よく?うつ伏せで倒れているので、どうやら地脈とは繋がっている様なのだが・・・・このような状態の時いつも近くに居てくれる精霊は・・・・近くに居ないようだ。

 エレンは全く動いていない・・・・呻いているから意識がないだけで生きている・・・・どうすれば?

 魔物がエレンに襲い掛かろうとしている!俺は咄嗟に未だ使った事の無い魔法【ファイヤー】を魔物に向かって放った!

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