第55話

 Side 冒険者ギルド


【冒険者ギルド】


「あん?ヘリットの身に何かが起こっただあ?」

 冒険者ギルドのギルドマスターである。

「ヘリット様はエレン様と共に指名依頼を、それも重要案件を受けております。万が一の時、後手に回ると大変ですから先ずはお知らせ、と思いまして。」

「やはりボプ達は黒か。だがなあ、エレン嬢で駄目だった場合、他に対処できる冒険者なんぞいない。」


 2人して悩んでいたが・・・・

『丁度良かったぞい。あんた達儂が見えると思うんじゃが、どうじゃ?』


 2人して驚いていた。

 何も無い所から何かが出現したからだ。


「あ、あの、まさかと思いますが、ヘリット様の周囲に居る精霊様、でしょうか?」


 確かヘリット様は精霊を使役していない、地脈から得られる魔力を対価に協力してもらっている関係、と言っていたのを思い出し、間違っても使役しているとは言えないと思っているステファニー。


『まあそんな事はどうでもいいのじゃ。それよりのう、急ぎ知らせた方がいいと思うての、儂がこうして知らせに来たんじゃが、あのボプという人族、精神に働きかけ、思うがままに誘導する術を持っておる。精神に異常をもたらす能力に対抗する必要があるようなのでこうして急ぎ知らせに来たんじゃよ。言っておくがヘイマンス殿とエレン嬢は元気にしておる。そうは言うても奴はヘイマンス殿をダシに、エレン嬢の装備をかっさらっていきおった。儂等が深層で得た武具もじゃ・・・・許せんのう。では屋敷へ向かうとするか・・・・ぐっどばいぐっどばいぐっどばいばい・・・・最近の若いもんは分からんか・・・・がくっ。』

 訳の分からない言葉を残し、去って行った精霊。

 ・・・・暫く固まる2人、否、周囲に居合わせた全員がそうだった。


「あれがヘリットの精霊か・・・・濃いな。」

 何が濃いかは敢えて言わないギルドマスター。

「はー、お爺さん、でしたね。」

 ヘリット様がじいちゃんと言っていた理由が分かったステファニー。


「ボプ達が戻ってきたら誰かが対応をせねばならんが・・・・精神干渉に耐性がある魔道具を装着する必要があるか。」

 こう言った魔道具はかなり高価で、1つ当たり冒険者ギルドで働く職員1年分の給料より高い。

 そんな魔道具がそうそう用意できるとは思えない。

 しかも金を出せば手に入るのかと言えば、そうではないのが実情。

「まあ、3つ程あるんだがな。」

「あるんですか!」

 ギルドマスターの告白に驚くステファニー。


「それよりこれでボプは黒と決まった。戻ってきた所を捕らえるぞ。」

 そう上手くいくのかしら、と思ったステファニーだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る