第18話

「今は何処を目指しているのだ?」

 エレンが自己紹介もしないまま、疑惑のパーティーリーダに質問する。


「目標は100層突破だが、今は60層を超えたあたりだな。50層からは魔物の質がガラッと変わる。50層までを目標としていれば何とかなるんだが、100層を目指すとなると今の装備とメンバー構成では如何ともし難くてな。実際メンバーに恵まれていた時は80層まで攻略できたが、現在のメンバー構成では60層が限界なのだ。なので前衛と後衛のメンバーを探していた所、君達が条件に適うとギルドから紹介があったので、いてもたってもいられなくってな、こうしてギルドにセッティングをしてもらった所だ。」

 本当にこの人達が?今接している限り不快な感じはしない。むしろ好感度さえ・・・・エレンから事前に聞かされていなければ騙されてしまうな、これ。

「私は確かに前衛が得意だ。場合によっては中衛も可能だ。それにヘイマンス殿は後衛に適している。精霊の力を用い魔物を仕留める事が出来る。」

「ほー、それは頼もしいな。もしよければ近いうちにダンジョンに行ってみないか?手始めに20層あたりまででどうだろう。ここまでで駄目と思ったら2人で戻る事も可能な階層だ。それに、もし一緒に奥へ行けそうならそのまま攻略してもいい。尤も焦って大怪我してしまえばこちとら後味が悪い。なので慎重に考えてもらっていい。」


 口が上手い。

 そして他のメンバーは何故か喋らない。交渉事はリーダー任せか?

 そして俺はエレンから任せて欲しいと言われている。

 尤もこの案件はエレンが引き受け、俺が協力する形だから敢えて口を挟まないが、もし俺の能力を聞かれたら答え・・・・ていいよな。


 その後お互いの戦闘スタイルを伝えたり、装備や所持しているアイテム等を可能な限り開示していく。

 エレンは剣や鎧の細かな性能は伝えなかったようだが、それは向こうもらしい。

 恐らくマジックアイテム、つまり魔道具や魔剣、装備で言えば何かの付与をしていたりするのだが、流石に最初からは教えないようだ。

 まあ俺なんか精霊頼みだから、装備って何だ?って聞かれても普通の服です、としか言いようがない。

 武器も俺は魔物と直接戦わないから短剣ぐらいしか持っていなかったりする。


 結局一度お試しで加入する、という話でまとまったようで、3日後に出発するらしい。

 その間に色々買い物しないといけないな。

 尤も土の精霊であるじいちゃんに頼めば、魔石等を地脈を通ってギルドで買い取ってもらい、その時メモを渡しておけば代金の代わりに欲しい品物やポーションなんかを用意してくれるから、実際荷物はそんなにいらなかったりするんだよな。

 あ、ダンジョンってどうやって寝泊まりするんだ?テントなどを設営する必要があるのだろうか。それとも安全地帯のような場所が存在し、そう言った場所では地面に布でもひいて寝るとか。

 根本的にダンジョンを知らないから、出発前に情報を仕入れておかねばならん!というかエレンに聞けばいいんじゃね?


 俺は疑惑のパーティーと別れてからエレンに聞いてみる事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る