第13話
冒険者ギルドでパーティー申請や素材の買取を済ませた俺は、エレンと共に完全に取り囲まれていた・・・・居合わせた冒険者達に。
「この女性があのエレンだって?」
「エレンさんってもっと大柄じゃなかった?」
「そもそも体型が違いすぎるぞ、別人じゃね?」
もう言いたい放題質問し放題、だがそれは全てエレンに、だ。
俺、完全に空気。
そう思っていたが、ごく一部の冒険者が、
「何であんな野郎とエレンが・・・・まさかショタなのか?」
「こんな冴えないのがあのエレンと?しかも仮面を外してみればめっちゃ美少女じゃねえか!釣り合ってねえじゃねえか!」
「ここは退場をて頂き僕が・・・・」
好き勝手言いすぎ。まあ冴えないってのは事実だから仕方がない。
それにショタ?10歳からほぼ肉体的に成長していないからそう言われるのも・・・・仕方がないか。
「ヘイマンス殿、資金の一部は共有として頂きたい・・・・金貨100枚程度もあれば暫く持つだろう。」
俺、今までちゃんとしたパーティー組んだ事なかったし、一度の依頼だけという事で限定的にパーティーへ加入した事はあるけれど、あくまでメンバーの一員だったんだよな。
今回は俺がリーダーらしい。
俺より名のあるエレンが適任だと思ったんだが、
「私にリーダーは向かないのだ。」
そう言われ呆気なく俺に。
「まあそのうち誰か別のメンバーが加わったりする事もあるだろうし、その時はまた考えよう。」
「任せた。」
エレン自身の戦闘力はかなりあるが、こう言った事には関心がないらしい。
今日はこれで手続きが終わり、また明日の早朝冒険者ギルドへ集まる事にした。
「俺は拠る所があるから今日は此処で解散だ。」
「いや、まだあるだろう。パーティーとしての活動に必要な買い物はどうするのだ?」
俺はずっとソロだったが、だからと言って必要な物を・・・・あ、テントなんかどうすれば?
「・・・・エレンは分かるのか?」
「それも含め、一緒に行かないか?私もずっとソロだった。だからパーティーで必須な物を見逃す可能性がある。」
「うーん、分かった・・・・その前に寄りたい所があるんだ、少しだけ時間をくれないか?」
「かまわないが何処へ向かうのだ?」
「すぐそこだから説明するより見てくれた方が早いかな。」
「では案内を頼む、ヘイマンス殿。」
周囲の好奇な目線や、色々な声・・・・殆どが俺に対する罵詈雑言なのだが・・・・を無視し、建物を出た。
・・・・
・・・
・・
・
【修道院】
「ヘイマンス殿、ここは修道院と記憶しているが、ここで暮らしているのだろうか。」
そんな訳ないじゃないか。
「ここは神にその身を捧げた女性だけが暮らす神聖な場所だよ。男性は祈りの間までしか立ち入れないんだ。あ、例外で相談室だったかな?個室での話し合いができる場所には入る事は出来るけれど、そこまでだよ。それに一度エレンは修道院のシスターに色々聞いた方がいいって少し前に言ったよな?」
「それはよかった。先だってここの女性を無理やり連れだそうとした子爵家が取り潰しになったと聞いている。」
「あーたまにいるんだよね、そういうの。確かにここで暮らす女性って何故か美人が多いから、欲に目がくらんだ貴族のボンボン?が知らないでバカをするんだよ。」
「ではヘイマンス殿は何用で?」
「まあ浄化して頂いたり、悩みの相談をしてもらう、かな?」
建物の前でエレンと話をしていると、修道院の門が開き、女性が俺の所へやってきた。
「これはヘリット・ヘイマンス様、本日は同伴者がおありなのですね。宜しければ中へお入りになりませんか?」
「ありがとうシスター。」
修道院で暮らす女性達に個人名はない。
本当はあるのだが、それを知るのは一緒に暮らすシスターだけだ。
外部の人間が特定のシスターと親しくなるのを避ける措置らしい。
まあ顔の一部を布で覆い隠しているので、誰が誰とか分かりにくいがそれでも俺にはわかってしまう。
『やっぱり修道院の女性はレベルが高いわねえ!神って実は独占欲が強いの?美人ばかり囲んじゃって・・・・って痛い!』
主にシルフさんだ。
彼女はシスター全員の顔と名前を知り尽くしているので、あれはシスター誰々って聞いてもいないのに俺に教えてくるんだ。
「まあ精霊様。神はそのような事は致しませんわ。」
シスターは精霊の声が分かるらしい。
「あー、いつもごめんなさい、シルフさん悪気ないのですが、人間に対し遠慮がないというか、多分神様だろうと遠慮がない気がしますが・・・・あ、また浄化をお願いしてもいいですか?」
「かまいませんわ・・・・この者達に神の祝福を!」
俺とエレンは不思議な光に包まれ、なんだか気持ちがよくなった。
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