第91話

 エレンが去って1週間が経った。

 なんとか自力で歩けるようになるまで1週間掛かったのだ。


 俺が回復する1週間前、つまりエレンが別れの挨拶をし去った後、暫くしてオリビアさんがやってきて、エレンの実家から移動する事になったと伝えてきた。

 俺は放心状態だったと思う。

 オリビアさんに全てを任せ、気が付けば1週間が経過していた。


 この後何とか普通に歩く事が出来るようになり、少しでも早くダンジョンへ向かうべく準備を進めてきた。


 オリビアさんも積極的に動いてくれ、エレンがダンジョンへ向かって10日後、俺は何とかダンジョンへ向かう準備を終えた。


 俺は1人で向かおうとしたが、

「いけません。私がお供いたします。」


 いや駄目だろう。

 冒険者ではないオリビアさんにダンジョンは無謀だ。

「それだけは駄目だ。」

「私、自身を護る術は心得ておりますし、このままヘイマンス様をおひとりでダンジョンへ向かわす訳にはまいりません。まだ体力が戻っていませんし、私も付いて行きます。」


 オリビアさんは俺と違い確固たる自分を持っている。

 なのでこうした時、頑として譲らない・・・・そんな女性だ。

 俺と違い、芯が強いって事だろう。

 きっと俺一人でダンジョンへ向かっても、勝手に付いてくるんだろうなあ。

「・・・・わかった、だが無理だと思ったら精霊に頼んで帰ってもらう。」

「そうはならないと思いますが、その条件でしたら構いません。では出発しましょう。」

 いやいやオリビアさんの装備が・・・・俺は強引に移動させられ、玄関でアンチェさんとトゥーナさんに見送られ・・・・あれ?何で2人がいるのだろう・・・・ダンジョンへ向かう事になった。


 あ、そうそう、何故アンチェさんとトゥーナさんがここに居るのかと言えば、俺がエレンの実家からオリビアさんに連れ出され、別の場所に住む事になった事が原因だと思う。

 で、さっきまで居た建物はどうやら買い上げたらしく、急遽2人をオリビアさんが呼んだらしい。

 あれ?じゃあ【メイエリング】の屋敷はどうなったんだ?と思ったがステファニーさんがいるので問題ないらしい。


 兎に角エレンの実家から一番近ダンジョンへ向かった。

 安直だが、一番近いダンジョンへ向かうと思ったからだ。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


【エッフェン領のダンジョン】


【メイエリング】にあるダンジョンと比べ、入り口は特に違いが分からない程似ていた。

 知らなかったら錯覚するかもしれないぞ、これは。


 所でこのダンジョン、どんなダンジョンなんだろう。

 尤も俺は【メイエリング】のダンジョンも殆ど知らないまま挑んでいたからなあ。


「【メイエリング】のダンジョンと同様、攻略を終えていないダンジョンとなります。」

 オリビアさんはきちんと調べてくれていたようだ。

「因みに過去の攻略は何層あたりなんだ?」

【メイエリング】のダンジョンは確か120層だったはず。


「現在130層付近まで攻略済み、と聞き及んでいます。」

 じゃあ目指すは100層か。

 エレンの弟と従弟が何を目的としてダンジョンへ向かったか知らないが、100層を攻略すれば貴族、それも子爵扱いだからな、恐らく2人は嫡男ではないから、親から爵位を譲り受ける事が出来ない。

 なので自ら爵位を求めるならば、ダンジョン100層を突破、というのが一番現実的・・・・らしい。

【メイエリング】では10年以上100層突破していなかったらしいから、これの何処が現実的なんだと突っ込みたくはなるが。

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