第50話

 エレンは恐らく結構な量の血を失っていると思われるので本調子ではないようだが、それでも戻ってきた剣を次々と投擲している。


 あれから魔物はエレンへ近づく事が出来ないまま、次々とドロップアイテムに変わっていく。

 このままエレンの無双タイムか?

 そう思ったがここまでだった。

 フラフラだったエレンはとうとう立っていられなくなり、その場にうずくまってしまった。


 やはり血を失っていたのが大きいのだろう。

 本当はとっくに限界を迎えていたのだが、それでも何とかしようと投擲をしていたんだな。


 俺はエレンの横に行き、

「後は任せろ!」


 エレンはその場に座り込んでしまった。

 倒れないよう何とか堪えているようだが、それすら辛そうだ。

 さて、次はどうするか。

 魔法屋で手に入れたのは、火属性の魔法だけではない。

 水属性の魔法もなかなか威力がある、と聞いている。

【ウォータージェット】を唱えた。

 この魔法、水を勢いよく放つのだが、小指ほどの細さしかないが、当たれば岩をも砕くと聞いている。

 細さが肝、らしい。


 で、魔物の頭に当たり・・・・貫通した?

 どうやら俺が考えているより凄い魔法らしい。


 この時俺は、地面に突っ伏していないにもかかわらず魔法を放っていたのだが、全く気が付いていなかった。

 そしてまたもや【ドクッ!】という感覚が体内を駆け巡った。

 少しすると何だか体内から力が湧いてくる、そんな感覚がある。

 俺は次に風魔法を使った。

【ウィンドカッター】である。

 これは見えないけれど風の刃物と言った感じで、よくシルフさんが使っている。

 魔物に当たると切り裂いてくれる、と聞いている。


 で、俺が放った魔法は・・・・魔物の身体を真っ二つにしていた。

 うわ!すげえな魔法って。


 またもや【ドクッ!】という感覚があり、もう何でも出来ちゃうのでは!という感覚になってきた・・・・気を付けねば。

 何せ俺も負傷をし、一応・・・・まだ回復していなかった。

 俺は自分にも【キュアー】を唱え、怪我を治療した。

 まだ魔物は沢山いるが、今の俺ならこれぐらい何とでもなる!!と思えるから不思議だ。

 この頃になってようやく?精霊達がやってきた。

『ひどい目に遭いました。』

『まさか精神干渉をするとかなんじゃアイツは。』

『我々精霊は精神干渉に弱いのです。』

『もう消えちゃうかと思ったわ!』


 アクアさんが最初に、その後はじいちゃん、サラマンダーさん、シルフさんがやってきた。


 光の精霊と闇の精霊は無言だ。


 いったいどういう事なんだ?

「話は後で。できれば魔物を仕留めて欲しい。それとエレンを治療して欲しいんだ。」

 俺は動く事ができる。だがエレンは身動きできない程のダメージがある。


『その前に魔力ちょーだい・・・・ってあれ?あんたなんか変わったわね。』

 シルフさんが変だ。

『ヘイマンス様、レベルアップおめでとうございます。』

 アクアさん、レベルアップって何?

『成程。だから立っておられるにも拘らず地脈と繋がっておられるのですね。』

 サラマンダーさん、どういう事?

『ほうほう、これは凄いのじゃ。』

 何が凄いのじいちゃん。

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