第86話

「ヘイマンス様が限界のようですので、何か分かりましたらエッフェン家へ報告を。」

 オリビアさんが俺の顔を見て即座に判断してくれた。

 ぶっちゃけ俺の身体が悲鳴を上げていたので、後の事は任せて休む事にした。

 旅の疲れではなく、成長痛?体中が痛むんだ。


 エレンはまだ男爵様と話があるようで、俺はオリビアさんの肩を借りて部屋を出た。


 視界の隅に男爵様が俺に頭を下げているのが見えたが、貴族の当主が俺に頭を下げるって、心臓に悪いぞ。


 俺はオリビアさんの肩を借りて歩いていたが、途中から半ば抱き着く形になってしまっていた・・・・申し訳ない!


 食事も、風呂も済ませていなかったがすぐに寝た。

 なんか柔らかいのを抱きかかえていたような気もしたが、抱き心地がよかったのか気持ちがよかったのか、気が付けば朝だった。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 オリビアさんに起こされ、俺は起きた。

 お腹が空いた・・・・そう思ったが、目の前には食事が用意されていた。

「おはようございますヘイマンス様。昨晩は何もお召しにならず寝てしまっていましたので、起床後直ぐに食べられるよう、ご用意致しました。」


 俺はひたすら食べた。

 だが身体の節々が痛むのは治らなかった。


 この痛みは精霊にも治せられないらしい。

 俺が手に入れた治療系の魔法でも無理だった。

 病気や怪我ではないから治療できないのだとか。


 只管我慢するしかない。

 エレンの実家へ到着するまでの我慢だ・・・・何故俺はエレンの実家に?

 何かわからんが、考える事が難しくなってきた・・・・目的地まではひたすら馬車に乗って移動、暫くは身体を動かさないでじーっとしていよう。


 着替えを終え、出発した。

 その後1週間程は問題なく進む事ができた。

 初日に街で襲われたのは一体何だったのだろう?という程何もなかった。


 出発してからたぶん10日が経過した頃、ようやくエレンの実家がある都市へ到着した。

 まあ馬車に乗ってひたすら耐えていたので、窓から外を眺める事もしなかったので、到着した都市がどれほどの規模だとか気が付かなかった・・・・気づけよ俺!

 歳の壁はそびえるような高さで、【城郭都市エッフェン】と記載があったのだが、当然ながら俺は馬車で半ば寝ていたから見ていなかった。


 そんな俺を見てエレンは、

「私の為に無理をさせてしまい申し訳ない。だがもう到着するので、今少し我慢してほしい。」

 やっと旅が終わるのか。

「わかった。」

 俺は再び目を瞑ったが・・・・


 襲われた翌日、馬車で移動を再開したが、俺はその後約1週間、道中精霊の存在を全く感じる事が出来ていなかったのだが、身体の痛みが酷かったので深く考える事が出来ていなかった。










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