第82話

 エレンと共に向かった宿は、俺には分不相応な宿だと一目見てわかった。


 建物は派手ではないが、立派過ぎたのだ。

 何ていうの?派手を好まない金持ちが、パッと見分からないものの、使っている素材の質が良すぎる、そんな感じだ。

 何言っているんだって?俺にも分からん。

 だが言える事は超高級宿だって事だ。


 恐らくエレンは親が貴族なのだろう。

 なので今回実家へ向かうにあたり、メイドがやってきて専用の馬車での移動だ。

 当然ながらそれに相応しい宿が求められる。

 なので俺は玄関前で固まってしまったのだ。

 どうしたんだ?といった感じで俺を見るエレン。

 俺は庶民なんだ!だからこんな宿は今まで利用した事が無いんだよ!


「ヘリット様、私共は馬車で移動をしておりますが、こうした宿には馬車を留め置けるようになっているのですが、通常の宿では馬車を預ける事が出来ません。従って馬車を預けるには、この宿と同等な格式がないと対応できないのですよ。」


 いつの間にか御者のおじさんが戻って来ていた。

 どうやら馬車を預けてきたらしい。


 ああそうだ、俺にはオジサンがいる。

 このままだと女性と同じ部屋にされかねなかったからな。

 俺は勝手な思い込みをして安心してしまっていた・・・・


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 宿での手続きは済んでいた。

 案内されるがまま俺とエレンは部屋へ案内された。


 因みにメイドさんとオリビアさんは、従者扱いなので別室らしい・・・・御者のおじさんも別室だった・・・・なんてこった!


 流石にエレンと俺も別室だよな?と思ったが、

「ずっとダンジョンで寝床が一緒だったのだ、今更分けてどうする。」

 ご尤も・・・・納得すると思っているのか!

 若い男女が同じ部屋とかありえないだろ!


「エレン、まさか俺とエレンが一緒の部屋とかないよな?」

「私の何が気に入らないというのだ。」

【いや、エレンは綺麗だし、美少女だしスタイル良いし・・・・そうじゃない!だからこそなんだよ!】


 俺は心の中でそう突っ込んだつもりだったが、

「そうか、私はヘイマンス殿からそのように思われていたのだな・・・・だが見た目だけで判断されるのは悲しい。」

 あれ?心の声が漏れていた?

「あのなあエレン、性格が合わなかったらそもそもここまで一緒に行動しないんだぞ。それと見た目がいいと、こっちが何ともないと思っていてもどうしても・・・・わかりょな・・・?」

 噛んだ!俺噛んじゃったよ!

「そうか、やはり私とヘイマンス殿は相思相愛だったのだな。私はむしろ歓迎なのだ、ここでしっかり実績を作っておかないと父に会わす顔がないではないか。」

 何を言っているんだエレンは。

 また暴走か?


 疲れていた俺はもう反論する気力が無くなってきており、エレンを信じて一緒の部屋へ入る事にした。

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