第22話

 ダンジョンに入って数時間足らずで10層へ到達した。

 エレンにとってこのぐらいの階層は勝手知ったる何とかで、迷う事なく最短距離で突き進んだ。


 魔物?エレンが瞬殺していて、俺と精霊は何もさせてもらえなかった・・・・俺と精霊の連携とか、エレンとの連携はどうなった?

 それに精霊達の事だ。

 特に地脈。じいちゃんが言うには地上とは勝手が違い、素材を得てもギルドへ運ぶのは難しいらしいからな。

 難しいのであって出来ない訳ではなく、ダンジョンの地脈は地上に比べ複雑だから、というのが理由。

 しかし未だ試していない、いやできていない?エレンが無双しているからだ。

 そんな事を思っていると、半日足らずで目的の20層へ到達した。


「なあエレン、何の為にダンジョンへ来たんだっけ?」

「私とヘイマンス殿の連携と、ヘイマンス殿と精霊がどのように・・・・あ!その、すまない、久しぶりのダンジョンだったのでつい夢中になってしまった。」

 見るからにショボンとしてしまうエレン。

 まあここまで出てきた魔物を見る限り、森で精霊達が仕留めてくれる魔物の方が明らかに強そうだし、気にしないでもいいかな。

「エレンはダンジョンが久しぶりだったんだ。それなら仕方がないな。でもね、今からは俺と精霊達にやらせてほしい。そうしないと俺達がダンジョンにやってきた意味が無くなってしまいそうだしね。」

「そ、そうか、そう言ってもらえると助かる。」

 エレンは少しだけながら回復してきたようだが、まだ回復していないな。

 ここはビシッと言ってやらないといけない・・・・でもエレンの顔を見ると、何だかフラフラと・・・・俺は思わずエレンの手を取り半ば抱き寄せる勢いで引っ張り、顔と顔がくっつきそうな距離になってしまった。

 俺、何をやっているのだろう。

 抱きしめるのは何かが違うと思い、思わず頭を撫でた。

「エレンは悪くない。まだ時間はあるからお互いの連携や、精霊達の戦いぶりや他に何が出来る確認しよう。」

「そ、そうだな・・・・ヘイマンス殿に撫でられると何だか落ち着く・・・・それに何だかよく分からないが、身体の中が変なのだ。私の中でヘイマンス殿にもう少しだけ・・・・」

 何か知らんがエレンが抱き着いてきた。

 俺は背中を優しくさすってあげた。

 俺、勘違いしそうだが、これはもしかしてもしかする?

 少し前はエレンの暴走が目に付いたが、今はそれとは違う何かを感じる。

 少ししてエレンが離れた。

「落ち着いた?」

「ありがとう。よくわからないがヘイマンス殿に抱かれて体臭を嗅いだら気分が落ち着いた。今後もよしなに。」

 周囲に人がいれば誤解を招きそうな言い回しだが、落ち着いたならいいだろう。

 ついでに言えば、抱かれたではなく抱き着かれた、だ。

 

 この後25層まで進み、精霊達の戦いに問題がない事を確認した。

 ただ一点、大いなる問題を残したまま・・・・つまり精霊が戦っている間、俺はずっと地面に突っ伏している事だ。

 ダンジョンも例外なく、このスタイルでないと精霊が戦闘を行えないようだ。

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