第23話

 日帰りでと思ったが、もう一日あるからとこのままダンジョンで一夜を過ごす事になった。

 どっちにしても2日後には新たなパーティーでダンジョンへ挑む事になるし、そうなれば何日もダンジョンで過ごさなくてはならない。

 それを含め予め慣れておいた方がいい、と。


 ダンジョンには安全地帯があるらしい。

 どういう訳か魔物が近づかない場所があるようで、こうした場所は冒険者達が安全に過ごせるようだ。

 ただ、あくまで魔物が近づいてこないだけで、人間は・・・・悪意があれば襲われるので、100%安全ではないが、魔物に襲われないだけでも随分と違う。


 そう言えば俺って、今まで野外で過ごした事が無い。

 護衛等の依頼は受けた事が無いし、受けるのは採取の依頼か、街中での便利屋宜しく細かな雑用ばかりだったので、野外で寝泊まりする必要が無かったのだ。

 だが安心してほしい。

 ちゃんとテントは用意してあるし、何ならベッドやトイレも・・・・え?何処にあるかって?


 そりゃあ土の精霊であるじいちゃんに頼んで、地脈を通して用意してある。

 万が一に備え、大きな布地は自分で持ち運んでいるので、いざという時は布地を利用し、寝床を用意はする。

 それにもし、じいちゃんが地脈から道具を取り出せなくても、じいちゃん自体は傍にいてくれるから、地面から色々用意してもらうつもり。

 実際外では用を足すのにトイレを設けてくれ、排便の後は地面に穴を掘って埋めてくれる。

 ありがとうじちゃん!


 で、今俺はじいちゃんが地脈から運んでくれたテントを設置、エレンと共にベッドで寝ている。

 勿論ベッドは別々だ。

 で、見張りはいらないのかと言えば、

『そのベッドで寝ていても、一応私達を維持するだけの魔力を地脈から引き出せるので、一晩程度はヘリット様を護りますから安心して寝て下さい。』


 水の精霊アクアさんから頼もしい答えが返ってきた。

「ありがとう。もし魔力が怪しくなったら起こして。」

『大丈夫ですわ。』

「見張りいらずとは、流石はヘイマンス殿だ。これで私も深い眠りにつける。ヘイマンス殿と精霊達に感謝する。」

 そう言うとあっという間にエレンは寝息を立ててしまった。

 そうそう、食事は携帯食を食べたので炊き出し等は今回無しだった。

 これもエレンの意見で、通常ダンジョンで炊き出しをするような荷物を持ち込むのは難しいので、少しの水と携帯食で済ませる事になる。

 慣れる為にも今回は携帯食だけにするようだ。


 竈はじいちゃんが作ってくれるし、食材はダンジョンで魔物がドロップするので持ち込む必要はないって事なんだが、これも確実ではないからと・・・・今までダンジョンには縁がなかったから、ダンジョンでの活動豊富なエレンに従おう。


 こうして俺は初めてダンジョンで寝泊まりをした。

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