第31話
魔法屋には何度かお世話になっている。
最初は俺に魔法の適性があったので、どんな魔法が使えるのかと思い
希望と共に向かったものだ。
だがそれも店に入って10分もしないうちに絶望に打ちひしがれる事となってしまった。
「魔力1に教える魔法なんぞねえ!」
魔法屋は昔からずっともうろ・・・・頑固ジジイがやっている。
魔法を取り扱う店自体は需要があるものの、魔力が備わっている人間は少ないので、覚える目的の商品は実際あまり売れない。
メインは消費アイテムだ。
それも魔力がない人間にも魔法が使える類の、だ。
それがスクロール(使い捨て)であったり、杖(こちらは魔石をセットする事で発動できる)であったり。
そして自身に魔力があれば魔法を使うたびに魔力が減る。
一晩寝れば大抵の魔力は回復するんだが、ダンジョンアタック中は都合よく魔力を回復できない。
そうなればアイテムに頼る他無く、こうした時に重宝するのが各種ポーションだ。
一般的なポーションは冒険者ギルドや商人ギルドでも取り扱っているが、魔力を回復させるポーションはあまり在庫がない、あっても鮮度が悪かったりする。
なので上質な、または効果の期待できる鮮度がある魔力回復ポーションは、基本魔法屋で購入する事になる。
なお、ポーションは薬草から得られる魔力に何らかの加工をし、飲める状態にしたものらしい。
薬師が製造を行うようだが・・・・この場合は調合と言うべきか・・・・製造方法は薬師以外には秘匿されているようだ。
俺も依頼で薬草を採取するが、調合の仕方が分からないのでいつも冒険者ギルドに引き取ってもらっている。
薬草も色々種類があって、怪我に効いたり体の調子をよくしてくれたり、千差万別だ。
尤も毒になる薬草も普通に生えているので採取時には要注意だ。
まあ、頼りになる精霊達が俺に協力してくれるから、その心配はないんだが。
で、今俺は頑固ジジイとにらめっこしている。
因みに俺が購入した指輪はエレンと共にこの店で買ったのだが、多分あの時ジジイはエレンに気がいっていて俺の事は眼中になかったのだろう・・・・客に失礼だと思うが、頑固ジジイは自分勝手だから気にしてはいけない。
ここは魔法屋だから、魔道具の類は豊富な品揃えがあり、需要もある。
だが値段は高い。
駆け出し冒険者にはどうあがいても買えない。
このせいで折角魔力無しでも魔法が使える魔道具が売っていても、実際に買える冒険者は少ない。
1年分の稼ぎが吹き飛ぶ程の値段だからだ。
俺は精霊達のお陰でそれなりに稼ぎがあるから買えたが、指輪1つで1年暮らせるほどの金額なんだ。
おっと脱線しまくりだぜ!
「何だクソガキ、魔力1が新たな魔法を得てどうするってんだ、ああ?」
この前あんたの所で魔力を底上げ出来るアイテム買ったじゃねえか!
因みに俺が買った指輪ってこんなのだ。
【魔力を蓄え、いざという時に引き出せる魔道具・指輪。】
「やっぱり耄碌してんじゃねえか!よく見ろこれを!あんたの所でこの前買った魔力を蓄える指輪だよ!これがあれば魔力1の俺でも魔法をぶっ放しても気を失わずに済むんじゃねえのか?いざという時に備え、もっと威力のある魔法も持っておきたいと思ったんだが、耄碌ジジイには俺に見合った魔法が用意できないと見える。」
俺はジジイの扱いは長けているつもりだ。
エレンと一緒だと鼻の下を伸ばす単なる助平ジジイだが、野郎だけの場合はこうして煽らねえと話にならん。
「なんだと!ワシに用意できん魔法はない!ああ?そこまで言うならとびっきりのを売ってやろう、最もポンコツなクソガキじゃまともに扱えんだろうがな!・・・・」
俺の魔力は1だが、指輪には恐らく10程の魔力を蓄えておけると思われる。
実際には魔法を使って指輪の魔力が切れるのを確認すべきなのだろうが、元々魔力1の俺には単なる火おこしの魔法や、水が飲みたいなあと思った時にちょろっと出る水魔法、ちょっと暑いよ?と思った時に微風を発生させ涼をとる、薬草採取の時に根っこをほじくり出したい時に地面を柔らかくする土魔法。
ざっと俺が取り扱えるのはこんな感じだ。
今回手に入れたのは、主に攻撃魔法だ。
これで俺にも攻撃手段が手に入ったんだぜ!
元々貧相な体つきの俺には、身体強化の魔法はあまり役に立ちそうにないが、身体強化の魔法を含め補助魔法も多数手に入れた。
金貨1000枚もの大金が一瞬にして吹き飛んだ。
しかしどうせまだまだ増えるからまあいだろう。
まだダンジョンでのドロップアイテムは査定が終わっていないし。
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