第38話
「ヘイマンス殿、どうだろう?」
現在85層を目前にしているのだが、エレンが俺に聞いてくる。
どうって聞かれても・・・・俺の目にはエレンが剣を投げている様に見えるから、そうとしか答えようがないんだが。
エレンは今、魔物と対峙をしている。
魔物の数が多すぎて、それぞれ手分けして戦っているんだが、エレンは俺の近くに居て、剣を投げて投げて投げまくっている。
エレンの得物は【出戻りちゃん】だ。
ネーミングセンスは壊滅的だが、エレンは自身が使用している剣を使いこなしている。
名前が示す通り、投擲しても手元に戻ってくるという凄い魔剣だ。
そのお陰でエレンはひたすら剣を投擲している。
で、俺に凄いアピールをして来るが、俺にアピールしても無駄だと言いたい。
「相変わらず凄い剣だな。寸分違わず魔物の急所を切り裂き戻ってくる。」
「そ、そうか、それ程でもないのだが、ヘイマンス殿がそう言うのだ、きっと私が思っているより凄いのだろう。」
俺はあくまで剣を褒めたんだが、何故かエレンは照れているようだ・・・・わざわざ指摘する事もないか。
エレンが投擲をする時、少し離れた場所からいくつもの視線を感じる。
まあ恐らくエレンの剣が目的なのだろうから、分かり易いっちゃ分かり易い。
「それに・・・・エレンの依頼対象者達が軒並み剣を見ているぞ?」
「やはりそうか。分かっていたが疑いようのない事実だったのだな。私の剣が目的か。最初から分かっていたが、依頼でなければヘイマンス殿はとんでもない被害を被る事になっていた。補償については我が身をもって「そう言うのいらないから!」・・・・魅力がないのだろうか。」
魅力?思いっきりあるが、俺にはエレンを幸せにはできないんだ。何せこの身も呪われており、10歳ぐらいの時から体が全く成長しなくなっているんだ。
精霊に頼めば解呪はしてくれるだろうが、万が一解呪した事によって地脈と繋がらなくなってしまう・・・・そう思うとおいそれと解呪できない。
俺はエレンに説明をした。
少しの間エレンは黙っていたが、
「もう既に十分な稼ぎがあるはずだ。万が一精霊と離れてしまう事があろうとも、私が護ってみせるし、今後のヘイマンス殿を精霊に代わって支えると誓おう。」
そこまでしなくても。
だがエレンが・・・・いや、駄目だな。
エレンは信じられないぐらい美少女過ぎて、俺には眩しすぎる。
そんな彼女を俺が拘束するのは駄目だ。
「エレンは責任を感じる必要はないし、万が一の時もあくまで自己責任だ。だから・・・・」
俺は最後まで言えなかった。
何故かと言えば、俺達が居る周囲に群がっていた魔物を全て仕留め終え、ボプさんを含めた4名が合流したからだ。
「どうやら先を越されたようだな。流石はエレン殿だ。我々4人が必死になってもエレン殿1人に適わない。それにしても・・・・その剣はあまりにも強力な魔剣だ。思わず見とれてしまったよ。」
うわ、どうやらこちらの視線に気が付いたようで、エレンの剣を注視していた言い訳をしてきた!それも理に適ったように聞こえるから不思議だ。
何かスキルでもあるのだろうか。
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