世界中の神の血たち
『山梨甲州
2021
マンズワイン』
日本を代表する固有品種『甲州』、山梨県を中心に栽培されている。
甲州はグリ系と呼ばれる薄紫色のブドウ皮をしている。
生食用も兼ねているが、多くはワイン醸造用に使われている。
フレッシュで軽い味わいの辛口白ワインに造られる場合が主流だが、様々なタイプのワインが造られている。
今回のワインは醤油で有名なキッコーマンが所有する老舗ワイナリー、マンズワインで造られている。
創業50年を超えるが、世界的に見れば若いワイナリーではある。
しかし、日本を代表するワイナリーの一つだろう。
では、実際に開けてみよう。
その色合いは実に淡く透明感がある。
香りも見た目通りスッキリとした柑橘系の香りではある。
味わいとしてはさっぱりとした繊細なみずみずしさ、といったところか。
酸味が効きすぎずに、柔らかな後味だ。
悪くはない。
『エビとアボカドのマヨマスタード和え』
普通にエビマヨにしてもよかったが、それだけでは面白くない。
マヨネーズにマスタードをブレンドし、アボカドも加えてみた。
エビは下処理が大変だが、今回は初めから下処理済みのエビを買ってきた。
これだけでも手間がかなり違う。
下処理はまず背わた取り、次に塩と酒、片栗粉を揉み込むのが基本だが、そこまでしてエビを食べたいとは思わない。
しかし、この下処理をしないと嫌な臭みが出るのだ。
さて、マヨネーズとマスタード、ケチャップにすりおろしニンニクをブレンドしてソースを作る。
ここに一口サイズにカットしたアボカドを投入する。
エビを両面しっかりと焼いて、中まで火が通れば十分だ。
それからソースとよく絡み合うようにやさしく混ぜ合わせる。
最後にゴリゴリっとブラックペッパーを削り、粉々になったパセリ散らせば完成だ。
ぷりっとしたエビとまろやかなアボカドの相性は実に良い。
マヨソースだけでもエビはたまらなく美味くなるのだが、マスタードのツンと来る辛味とつぶつぶの食感がまた良いアクセントなる。
ワインだけではなく、様々な飲料と一緒に食べれば食欲三倍速だ。
先程、ワイン単体での評価は悪くない、だった。
だが、食事と合わせれば評価が変わる。
食事を引き立てる役割を存分に発揮してくるのだ。
これが日本式の食事と料理の組み合わせとして一つの在り方なのだろう。
日本らしい神の血、自己主張の強い世界とのワインの違いと個性はすでにそこにあるのかもしれない。
☆☆☆
ヴィラマリアへと初出勤は無事にでき、集合場所の共同休憩室に入るとそこにはかつてないほどの大人数が集まり、席についていた。
大体30名ほどだったと思う。
一同がずらりと並び、ホワイトボードやTVスクリーンなどが正面に置かれている。
バスに乗れなかった僕たちは出遅れはしたが、まだ開始前だったので空いている席についた。
そうして、初日のオリエンテーションが始まった。
大体は初めはどこも同じ、ワイナリーについての説明だった。
その後、手続き関係の書類が配られ、記入し備品の配布が前半にやることだった。
そうして手続き関係が終わり、安全靴のサイズチェック、ヘルメットや蛍光シャツを配られ、与えられたロッカーに荷物をしまって一段落だ。
それからワイナリー内部の案内となった。
人数が多いので二手に分かれた。
グルっと見て回るわけだが、広すぎるので一度に覚えることなどできやしなかった。
その広さはいずれ語るので、ここでは見て回るだけで1時間以上かかったということだけは書いておこう。
さて、全てを見て回った後、記念の集合写真を取った。
(それは近況ノートで)
そのようにして初日は終わり、その次の日からはいくつかの班に分かれて研修のような作業確認をした。
他にも座学の講習なども行い、それぞれが担当する仕事の班編成も決まり、着々とシーズンの到来の準備を整えていった。
そういえばもう一つ、このヴィラマリアというワイナリーは世界的に有名でもあり、ニュージーランドを代表する大ワイナリーだ。
1時間にも及ぶドキュメンタリー番組が制作され、地元ブレナムの映画館で見に行ったこともあった。
ちなみに、アメリカ版の密林プライム・ビデオで有料で見ることもできる。
そして、その週末の金曜日、午前中に仕事を終え、昼から共同スペースで歓迎パーティが行われた。
共同休憩室にはオーブン付のIHキッチンがあり、様々な料理が作られていた。
外ではバーベキューが行われ、ピザ窯もある。
メインは何と言ってもそれぞれ持ち込んだ各国のワインたちだ。
まさに世界中、ヨーロッパ、南米、南アフリカ、アメリカ、僕は日本ワインの甲州を持っていった。
実にそれだけ多国籍なメンバーたちだったのだ。
僕の持っていった日本ワインも珍しいこともあり、なかなか好評であった。
近況ノートとは違うワインではあるが。
娯楽スペースにはビリヤード台もあり、常勤メンバーを中心に興じる者たちもいた。
僕もまた、世界中の神の血たちを堪能することができた。
さらに、次の土曜日の夜には街の中心部にあるパブでメンバーたちが集まって飲み交わした。
それぞれうまくコミュニケーションを取り、仕事も遊びも楽しむ。
幸先の良いスタートだったと思う。
この時は。
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