終幕

神の血は終わらない

 ワイン探究の旅が突然強制終了させられた僕だったが、それでも生きていかなければならない。

 日本への帰国時から振り返ってみよう。


 この当時は空港でPCR検査をしなければならなかった。

 すぐに陽か陰性かはわからなかったが、日本よりも感染者数の少なかったニュージーランドにいたのだからまず間違いなく陰性であることは確信していた。

 後日、陰性の連絡を受けた。


 この当時は帰国時、公共交通機関を使うことはできなかった。

 どこかで14日間の隔離が義務付けられていたからだ。

 場所は受入許可のある宿泊施設か自宅であった。


 宿泊施設は自腹、移動は自家用車かレンタカー、許可のあるタクシーのみだったと思う。

 当時の帰国便は羽田しかなかったと思う。

 このあたりの記憶が曖昧なので、ご容赦願いたい。


 どちらにせよ、関東在住ではなかったので一人で行動していては破産待ったなしだった。

 遠方にある実家から迎えに来てもらうことになったわけだ。

 この当時、道中では自粛警察なる独善的な連中が蔓延っていたし、孤立無援になるところで助け舟を出してくれた両親には感謝しか無い。


 そうして、実家のお世話になりながら14日間の隔離生活が行われた。

 しかし、外に出ることが何もできないので暇すぎるのである。


 僕はこの時からカクヨムを始めることになった。

 以前、某小説家になろうぜで南米チリの旅の終わりから拙作異世界ファンタジー『管理者のお仕事~』を書いていた。

 しかし、不適切な性描写があるという理由で削除されていたのだ。


 実際は、かなりマイルドな濡れ場を書いただけだった。

 それなのに削除とはやってられるか! とモチベーションが無になっていたので放置していたのだ。

 それを丁度良い機会だと、カクヨムに引っ越して来て連載を再開した。

 進行が鈍足過ぎて未だに未完であるが(笑)


 さて、隔離期間が終わり、今後の身の振り方を考えたわけだ。


 とりあえず、以前お世話になった山梨県の某ワイナリーでワインの仕込み時期だけの期間限定で働くことになった。

 その間にニュージーランドの国境が開いてくれることを願ったが、想いは全く届かずコロナ禍の終息は見られなかった。


 そうして、思い立ったわけだ。

 日本でワインをやるのはどうだろうか?

 と。


 僕は思い立ったが吉日とばかりに、日本のワイン産地を調べてみた。

 日本全国どこにでもワイナリーはあるのである。


 当然、ブドウの育ちやすいところは限られてくるので、絞り込んでみた。

 そして、候補地は数カ所に絞られた。

 

 窓口になっている各自治体に連絡を取り、その中のとある自治体の担当者からすぐに連絡が来た。

 ZOOMで話をし、一度来てみてはどうだろうか、ということになった。


 僕はお世話になっていたワイナリーの仕事が終わると実際に訪れてみた。

 地元の生産者や同世代の移住者たちと出会い、新規就農なるものの話を聞いてみた。

 

 そうなってみると、あれよあれよという間に話が進み、とある自治体に移住することになった。

 さらに、とある自治体で行われている『ワインの郷プロジェクト』なるものに参加することも決まった。


 約二年間ほど地元ワイナリーでお世話になりつつ、様々な準備を進めていった。


 幸運にもぶどう畑を一箇所借り受け、空き地の畑も一箇所借り受けることも決まった。

 そして、機は熟した。

 この春、日本のとある場所でブドウ農家としてデビューすることになり、ワイナリー設立を目指していくわけだ。


 しかし、良いことばかりではない。

 ワイン造りは農業でもある。

 楽しい時もあるが、天候や情勢次第で長く険しい苦難の道が続いていくこともあるだろう。

 しかも、課題はまだまだ山積みだ。

 それでも、今は前を向いて歩いていこうと思う。

 

 確かに、旅は終わった。

 だが、どこで何をしようとも諦めなければ神の血は終わらない。


 そうだ。

 真の戦いはこれから始まるのだ!


―第二部 了―

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