地中海にたつ
今回はしょうもない性描写があります。
ご注意ください。
『ヴィラ・デ・クロワ
2020
ピクプール・ド・ピネ(白)』
南仏にある学園都市モンペリエから程近い港町セートに隣接するトー湖。
牡蠣やムール貝の養殖で有名な塩水湖、その近郊の村々で育てられる地ブドウ、ピクプールで造られる白ワインである。
と、紹介はしたが、初めて飲む品種である。
さて、どんなお味だろうか?
まるで柑橘のように爽やかな香り、よく冷やして飲むと美味しくなる夏の暑い時期に相応しいタイプだ。
りんごをかじっているような果実感とミネラルのような無機質な雰囲気、後味に少々苦味が残る。
海に近いワインなので、シーフードと合わせてみよう。
『イカのセート風煮込みとアイオリソース』
簡単に言ってしまえば、イカのトマト煮込みである。
しかしながら、地中海に面した南仏セートの郷土料理であり、様々なアレンジがされており、バカにできない名物料理である。
これにアクセントとなるアイオリソースを添えて食す。
アイ(ニンニク)オリ(油)が語源となっており、おろしニンニクをマヨネーズに加えて作ったソースなので、大体のものに合う。
もちろん、このセート煮にも良く合う。
困ったことに、三人前近くを一人で食べてしまった。
原価は安いのだが、つい食べすぎてしまいエンゲル係数が上がってしまう。
さて、ワインと合わせてみる。
セート煮にクリームチーズを加えてコクを出しているので、そのまま食べれば間違いなく美味しい。
しかし、このワインでは合わせるにはちょっと力負けしてしまう。
重い白品種のヴィオニエなら良く合ったかもしれない。
細かいことを気にしないで飲むのだが、一緒に食べる米の方がよく進んだ。
ちなみに、中世の時代からヨーロッパでも米は食べられていた。
イタリアのリゾットやスペインのパエリアなどの米料理があるから自明の理だと思う。
セート煮に米がよく進むのは間違いではないと思う。
そして、アイオリソースにはニンニクがふんだんに含まれている。
そのニンニクももりもりと食べたわけだが、その効果は実に有名だ。
ある意味、バカンスに必要な成分かもしれない。
しかし、その成分は油断すると危険だ。
☆☆☆
フランス南部モンペリエ、地中海に程近い学園都市であるが、観光資源も豊富だ。
モンペリエ駅に降り立ち、格安ホステルへと向かう。
街の中心部には、コメディ広場という欧州最大規模の歩行者専用広場が広がっている。
広場の中央にはギリシャ神話の三美神の巨大な噴水があり、オペラ座をはじめ、荘厳な建築物に囲まれている。
おしゃれなオープンカフェやレストランが軒を連ね、バカンスを楽しむ人々で賑わっている。
ストリートパフォーマーたちが人々をさらに楽しませる。
バカンスの時期は毎日がお祭りのようだ。
今回はすんなりと宿が決まり、ドミトリーの大部屋に荷物を置きにやって来た。
普通の二段ベッド、ほどほどに汚い部屋だが、パリの時に比べればはるかにマシに感じる。
夏休み中らしき各国の大学生らしき若者たちが、それぞれのグループで楽しそうに話をしている。
そして、僕は一人散策に出かける。
ブラブラ歩き回ると、大聖堂や凱旋門といった大物が目につく。
さらに散策を続けると趣のある狭い路地に入っていった。
どうやら旧市街にやって来たようだ。
石畳や石壁に挟まれた傾斜のある階段など、異世界ファンタジーを彷彿とさせる。
小さなショップもあり、なぜかロマンを感じる。
歩き疲れた頃、散策をやめて宿に帰った。
ヨーロッパでの早い安い美味いの定番、ニンニクたっぷりのアイオリソース入のケバブを食べて寝た。
次の日、少し遠出をして、電車で30分かからないぐらいの港町セートにやって来た。
セートは「ラングドックのヴェネツィア」と呼ばれ、縦横に運河が走る。
しかし、観光地化は大してされておらず、庶民の生活が息づいている。
敷居の低い魚屋のマルシェがいくつも立っている。
それから、フランスを代表する大詩人ポール・ヴァレリーの生誕地でもある。
僕はいつもどおりガイドブックを持つこともなくブラブラと歩き回る。
お腹が空いてきた頃に、目についたビストロで名物料理のイカのセート煮をいただく。
南仏は日照量が多く、この日も青空が広がり、オープン席が最高に気持ちよかった。
本場のセート煮は、そのままだとトマト味が強いだけで少々物足りないので、ニンニクたっぷりのアイオリソースを入れて濃厚な味付けにした。
白ワインもよく進み、ほろ酔い加減で気分良く帰っていった。
そして、モンペリエ三日目、のんびりしようと近くのビーチにトラムに乗って出掛けた。
その前に、前日に豪勢な食事にしてしまったので、節約のためにアイオリ入りのケバブで腹ごしらえをした。
昼過ぎからやってきたが、多くの老若男女で賑わっていた。
地中海のリゾート地で有名なのは、ニースなどのコート・ダジュールだろう。
しかし、このモンペリエも同じ地中海なので海は青色が鮮やかで美しい。
個人的な勝手なイメージだが、ニースやモナコのあるコート・ダジュールは、どちらかといえばセレブ向けな感じがする。
こちらモンペリエなどスペイン寄りの方は、少し庶民向けな雰囲気がある。
僕はこちらの方が向いていると思う。
さて、空いているスペースを見つけ、ゴロンと横になる。
この熱い太陽にジリジリと焼かれる感覚が気持ちいい。
心地よい波の音を聞きながら、そのまま溶けていくように転がっていた。
熱くなってきたら背を向け、上を向き、さらに熱くなったら海に入って地中海を満喫していた。
のんびりまったりが、バカンスだな。
そんなことをしてのんびりしていると、僕が陣取っていた近くに若いカップルがやって来た。
金髪美女と男には興味ないのでたくましそうな男だったということだけは覚えている。
こちらこそ真のバカンス、リア充たちの甘い時間だった。
そんな二人がイチャイチャしながら海に入る準備をしていた。
そうしたら、金髪美女は何のためらいもなく、トップレスになった。
な、なぜだ!?
ここは、ヌーディストビーチではない。
家族連れも多くいる普通のビーチだ。
だが、誰も自然としていて特に反応を示していなかった。
実はよく見ると、ちらほらトップレスの女性たちがいた。
ちびっ子はどこにでもいるだろうが、お肉のたるんだオバサマもいる。
そこに二つの膨らみがあるとつい目を向けてしまうのが、男の
僕も無条件反射で目を向けてしまった。
この時に、大失敗に気がついた。
連日、ニンニクたっぷりのアイオリソースばかりを食べてしまっていたのだ。
困ったことに金髪美女を見てしまった時の反応が早かった。
今まさに、公衆の面前で地中海に汚れた塔がたとうとしていた。
ま、まずい!
僕は大急ぎの海の中に入り、落ち着くまでひたすら泳ぎ続けた。
バカンス、何という甘美で危険な罠があるものなのだろうか。
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