マリアージュは運命の巡り合わせ
『ギンブレット グレイヴェルズ ザ ギンブレット
2016
トリニティ ヒル 』
ニュージーランド北島東部ホークス・ベイにある量より質の姿勢を持つこだわりのワインを造るワイナリー。
ティッシュのネイピアで有名な街が中心で、好天に恵まれた土地であり、ワインの名産地として知られている。
その中でもギンブレット・グレイヴェルズ地区、水はけの良い砂利質土壌のため、凝縮感があり風味豊かなブドウが取れ、高品質なワインが造られる。
今では高品質ワインを産出する地区だが、当初はゴミの埋立地にする計画があったらしい。
そこに最初にブドウを植えたワイナリーがあり、高品質なブドウが取れることが分かり、計画が取りやめになった経緯がある。
運命の巡り合わせとは不思議なものだ。
では、こちらのワインを開ける。
黒に近い色合いから、濃厚なフルボディワインだと予想される。
カベルネ・ソーヴィニヨン、フラン、メルロー、マルベックというボルドーブレンドだから、ありえる話だろう。
香りからは、カシスのような黒系果実、やや青さも感じられる。
味わいはどうだろうか?
やや熟成されているだけあって、タンニンの渋味はやや穏やかだが、濃厚な果実味はあり、酸味は少なめか。
少し腐葉土のような香りとやはり青い印象は残る。
全体としては、複雑な味わいでうまくまとめられている。
『マッシュポテトとハーブソーセージ』
料理は対称的にシンプルにした。
ホクホクになるまでしっかりと柔らかくしたイモとバターを一緒にマッシュする。
バターと塩の香りが鼻腔をくすぐる。
これだけで味わいにリッチで深みが出るのだ。
ハーブとともに練り込まれたソーセージを焼く。
ジューシーな肉汁とともに、爽やかな香りも立ち上ってくる。
皿に盛り付け、チーズをトッピングして余熱でとろけて完成だ。
マッシュポテトは、ホクホクとした食感や滑らかな食感が好きな人など様々だろう。
僕はその時の気分で変わるが、今回はホクホクとした食感にしてみた。
ソーセージの肉汁から甘い脂とともにハーブの爽やかな味わいがよく出てくる。
肉というのは幸福感を程よく出してくれるものだ。
ホクホクとしたマッシュポテトなので、肉汁の旨味を見事に吸収してくれる。
肉とイモの相乗効果は素晴らしいものがある。
とろりとしたチーズもいいアクセントになる。
では、ワインと合わせよう。
これが合わないわけがない。
肉汁の脂を穏やかな赤ワインのタンニンが洗い流し、ワインの味わいをより鮮明にさせてくれる。
マリアージュとはうまく言った言葉だ。
相性の良い者同士、何事もお似合いなのだ。
だが、人生という荒波において、相性の良い相手と巡り合うことは、運任せな部分がある。
自分が望んだところで、相手も同じとは限らない。
☆☆☆
本格的に仕事は始まったわけだが、最盛期になる前は週末に当然休みもある。
僕も週末の休みを楽しみ、南隣のホークベイに車で二時間ほどドライブをしに出かけた。
ホークスベイは、ニュージーランドで二番目の規模のワイン産地である。
僕は学生時代から何度も訪れていた。
途中で温水プールのような温泉があり、硫黄の匂いはなかなかなものだ。
山の中にある自然豊かな位置で、僕はたまに訪れていた。
僕は、冒頭のワイナリーを訪れてテイスティングしてワインを買って帰っていった。
途中の温泉にも当然立ち寄った。
そうして住んでいるキャンプ場に戻ると何やら楽しそうに、共同スペースでワイワイガヤガヤとしていた。
僕も呼ばれて買ってきたワインを開けて参加した。
ギズボーンという街の周辺には、ブドウ畑以外にも様々な果樹が栽培されている。
そのため、様々な国の若者たちや出稼ぎ労働者たちが多く集まる。
このキャンプ場は、そういった人々がたくさん住んでいた。
この当時は、イングランドのカップル、チェコのカップル、ドイツのカップル、フランスのカップル、マオリの若夫婦、老夫婦、とにかくカップルたちがやたらといたのだ。
僕?
HAHAHA!
はは、は……
さて、そんな人々の中に若いドイツ娘がいた。
まだやって来て1週間ほどと日が浅かったが、楽しく一緒に飲んだ。
やはり若くともよく飲む人種だ、僕は隣の席にいる、出るところの出ている一人と話をしていたわけだ。
どんな仕事をしているのか、この街に来る前に何をしていたのか、といった当たり障りのない話から始めた。
その内に、周囲のカップルたちはまったりとイチャイチャしていたので、僕も気分が高ぶっていたのかもしれない。
僕は隣のドイツ娘も酔いが進んできたのか、イケるのではないかという気がしていた。
「そういえば、彼氏とかっているの?」
僕は勝算があると踏んで攻めてみた。
相手は一人で、男のいる気配がなかったからだ。
「いないけど?」
やはり、そうだった!
僕はさらに踏み込もうとした口を開きかけた時だった。
「いないけど、彼女がいるの」
僕は口を開いたまま固まった。
言葉の意味がわからなかったからだ。
そして、ドイツ娘はとどめを刺した。
「男に興味ないの。ほら、これが彼女」
ドイツ娘は僕に二人でイチャイチャしている画像を見せてきた。
僕はあっさりと爆死した。
僕の女運などこんなものだ。
こうして、僕は人生に疲れて仕事に戻る。
運命の巡り合わせ?
そんなモノ信じないぞ!
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