最後の収穫へ向かう
『カーヴ ド ランジュヴァン ロゼ ダンジュ
2020
ファミーユ ブーグリエ』
フランスのロワール地方、アンジュ地区で生産されるロゼワインである。
フランスのロゼといえば、とその中に数えられるほど世界的に人気がある。
こちらのワインはどうだろうか?
グラスに注いだサーモンピンクの色合いは可愛らしい。
秋というよりも春の晴れた日に飲みたい感じである。
ベリーのような淡い香りとフレッシュでフルーティ、やや甘みを感じる。
缶チューハイほど甘ったるくはないが、ワインを飲み慣れていない人には飲みやすいかもしれない。
ワインを飲み慣れていると、これだけで飲むには少々平凡ではあるように感じる。
『麻婆豆腐』
言わずと知れた中華料理の代表の一つだろう。
ピリッとした辛さと豆腐のまろやかさが癖になる、白米との相性が抜群だ。
詳しく書かずとも、まず間違いなく味の想像はできるだろう。
それでは、ロゼワインとはどうだろうか?
結論から言うと、あり、だと思う。
思う、という曖昧な表現だが条件付きでこの組み合わせは合う。
条件は麻婆豆腐の辛さ次第ということだ。
このワインの場合は辛さが控えめなら良く合う。
ほんのりとした甘さが花椒の痺れるような辛さを和らげてくれるのだ。
優しい甘さが攻撃的で刺激のあるスパイスを柔らかく包み込むかのようだ。
麻婆の辛さが上がれば、その分より甘みが強くなれば相対的にバランスが取れるというわけだ。
そういうことで、強烈な個性のある麻婆豆腐という料理と、単品では平凡な味わいのロゼは意外と条件次第で合う。
何事もうまく噛み合えば、気分が良いものだ。
☆☆☆
シャブリでの収穫も無事に終わった。
1週間ほどと少々短かったが、有意義な時間だった。
ここでも最終日にはパーティーだった。
前回みたいに歌って踊って騒いでということはなく、敷地内の庭で立食形式のちょっとカジュアルな大人のパーティーといった感じだ。
この夜、久しぶりに雨が降った。
パーティーも早々に終了し、程々に酔っていい気分のまま終われた。
特に誰もケンカすることなく、波乱もなく収穫祭は終わった。
その次の日、僕は駅まで送ってもらった。
前回動かなかった電車に乗って、次の収穫地ロワール地方シノンへと向かった。
今回は全く問題なく電車は予定通り発車、経由地のパリに到着した。
この時期にはすでに日が落ち始めるのは早く、夕暮れ時にパリを出発、シノン駅に到着する頃には辺りは真っ暗だった。
そんな中、駅に降り立ち、出入り口には次のワイナリーのオーナーの奥さんが待っていてくれた。
事前にメールで連絡を取り合っていて、定刻通り待ち合わせ場所で落ち合うことができた。
そこから車でワイナリーまで送ってもらい、郊外に出て自然豊かな道を進むとワイナリー兼自宅に到着した。
夜ご飯をまだ食べていないという話をすると自宅に連れて行ってもらって食事まで頂いてしまった。
それから従業員用に建物に連れて行ってもらった。
ここで、寝食ともにする仲間たちと出会った。
このように、すべてが予定通りに事が運んだのはフランスに来て初めてだったかもしれない。
それだけで嬉しくなった。
しかし、僕には何かが取り憑いているのだろうか?
それともワインの神による試練なのだろうか?
ここでの収穫も当然のように波乱が待っていた。
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