小旅行 ワシントン州へ
『コロンビア ヴァレー カベルネ ソーヴィニヨン
2016
シャトー サン ミッシェル』
ワシントン州シアトル郊外にフランス風の
ワシントン州を代表するワイナリー、シャトー サン ミッシェルである。
かなりの大規模ワイナリーで、赤ワイン用、白ワイン用の醸造所が二箇所ある。
畑面積は1420ha、東京ドーム300個分をゆうに超える。
東京ドームという分かりにくい単位で広大さを想像してもらいたい。
さて、能書きをたれていると眠くなるのでワインを開けよう。
色合いは黒に近いほど濃厚、ワシントン州はアメリカの中ではやや冷涼だが、カリフォルニアのように明るい陽気な印象を受ける。
開けてすぐにフルーティーな香りが漂う、何とも馴染みやすいアメリカらしさだ。
味わいは樽のオークらしさが強く感じるが、カシスのように熟した黒系果実のニュアンスもあり、味わいにやや複雑さを感じる。
なぜだろうかと調べてみたら、シラーやムールヴェードルなど、他の品種もごく少量ずつブレンドされているようだ。
タンニンの渋味がきつくなく、スルッと飲めてしまう実に庶民的なワインの作りだった。
『中華風甘酢あん肉団子』
今回は中華の肉料理で合わせることにした。
作り方はお手軽に簡略なレシピで。
ひき肉とタマネギのみじん切り、調味料を混ぜ合わせてとにかく捏ねる。
小さく丸めて、中華らしく油で揚げる。
甘酢あんを適当にブレンドして、揚げた肉団子と温め、とろみがついて程よく味が絡まったら完成だ。
最後に胡麻油での風味付けを忘れてはならない。
実食をするが、こいつは単純に美味しい。
ジューシーな肉汁が溢れ、甘酸っぱいタレとよく合うのだ。
油は不健康、だが、それが旨味となる。
ワインと合わせる。
特に悪くはないが、どこか微妙。
ワインのフルーティーな味わいがどこかぼやけて酸味が際立ってしまったような気がする。
甘酢タレが良くなかったかな?
なかなか全ては理想通りにはいかないものだ。
しかし、それもまた新たな発見となることもある。
何事も興味を持ったことを試してみる。
それもまた、人生という旅の楽しみ方なのかもしれない。
☆☆☆
仕事のピークは過ぎたが、まだまだ仕事自体はある。
発酵の終わった赤ワインをプレスにかけるのだが、赤ワインの液体部分だけをタンクに移し替える。
そうして残った皮をタンクからシャベルでかき出し、プレス機に投入して絞るわけだ。
その後、タンクに入れたワインの中の沈殿物が溜まった頃、上澄み部分を樽に入れていく。
他にも次のシーズンまで使わない除梗破砕機などの専用の機械を丁寧に洗浄して、来年まで封印したり、白ワインの入っているタンクは落ち着かせてしばらく動かさない。
それ以外の使わないタンクも薬剤でキレイに洗浄して封印した。
仕事量は圧倒的に少なくなるので、定時上がり、土日祝日は完全に休みだ。
そういうことで、僕は週末の三連休を利用して、車で小旅行に出掛けた。
ま、いつも通り、独りで、だが……
この三連休、ジル氏はワシントンDCにいる娘のところへと遊びに行っていた。
僕はワシントン州へと向かった。
同じワシントンだが、全く違うワシントンで紛らわしいが気にしない。
さて、車でまっすぐ向かえば三時間ほどだ。
時速100kmで計算するのが基本ではあるが。
住んでいたビーバートンからオレゴン最大の都市ポートランドを越え、コロンビア川も越え、ワシントン州に入った。
途中のファミレスで油っこいベーコンエッグとベーグルのブランチを食べ、さらに先を進み、そして水に囲まれた大都市シアトルへと到着した。
やっては来たが、正直、詳しいことは何も知らない。
とりあえず、中心部の立体駐車場に車を置いてブラリと散歩をしてみた。
すぐ近くに、パイク・プレース・マーケットという人々で賑わうユニークな市場にやって来た。
様々な魚、野菜や果物、ドライフルーツ、アクセサリーなど雑多な店が多い。
どこかノスタルジーを感じるレコード店もあり、ショッピングが好きならば楽しめることが多いだろう。
外に出てみてもまだまだ屋台も多い。
僕はあまり好きではないが、おっ、と目を見張ってしまった。
スターバックス一号店だ。
かなりの大行列で、根強いファンが多いようだ。
僕は外から眺めただけで満足だったが。
そうしてブラブラとダウンタウンを歩いていると、人混みが現れ、道が通行止めになっていた。
賑やかな音楽が流れ、大通りでパレードが行われている。
地元の高校生?のような若者がトラペットなどの楽器を演奏し、ディ◯ニーのようなアニメキャラの巨大な物体を車で曳いている。
僕はスターバックスとは違うコーヒーを片手にぼんやりと眺めて過ごした。
中心部で観光を楽しんだ後は、予約していた安ホテルへと向かい、この日がグッスリと休んだ。
次の日は、前半に紹介したシャトー サン ミッシェルなどのあるワイナリーエリアへとテイスティングに行ったり、またパイク・プレース・マーケットへと出掛けてシーフードのランチを楽しんだ。
その夜、僕は中華バイキングをたらふく食べられる店へと向かった。
ビールを一杯、様々な中華があるが、なぜか寿司もあり、どちらも大体アジアという大雑把さがアメリカらしい。
肉団子も美味しかったが、ザリガニもあったので試してみた。
唐揚げにされていたので殻ごと食べたが、香ばしいだけで味が云々ではなく、経験値が上がっただけではあった。
そうして帰ろうと思ったが、下心を膨らませてカジノへと繰り出した。
ホロ酔いに任せ、一攫千金を夢みて、ムフフなことをしてやろうと目論んだ。
しかし、結果は三分で100ドルの惨敗、僕はスゴスゴと安ホテルへと帰っていった。
僕に、アメリカンドリームはやってこなかったわけだ。
こうして、シアトルの小旅行は終了した。
帰る途中で、セントへレイズ山に寄ってみた。
80年代に大噴火を起こした火山である。
その威力の凄まじさ、周囲の木々を吹き飛ばし、未だにその爪痕を残していた。
人間が如何に尊大に振る舞おうとも、自然の力の前には無力、そう実感させられる景観だった。
ごくほんの一部ではあるが、他の地域も知ることはできた。
これもまた、一つの経験なのだろう。
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