1Vintage ニュージーランド北島 ギズボーン
世界で最初に日が昇る街
『クレイジー バイ ネイチヤー コスモ レッド
2016
ミルトン ヴィンヤーズ』
ニュージーランドで初めて公的なオーガニック認証を取得したワイナリーである。
北島北東部・温暖な気候と緑豊かな自然に育まれた海辺の街ギズボーンに位置している。
今回のワインの名前の通り、自然に敬意を払い、どこまでも狂おしいほど自然について追求している。
バイオダイナミック栽培でブドウ苗を植えた頃は、そんなものはできない、イカれているなどなど、様々な批判をされたそうだが、今日評価も高く成功しているワイナリーだと言える。
では、こちらのワインについて、赤ワイン品種シラーとマルベック、白品種のヴィオニエがブレンドされている。
なぜ白品種が混ぜられているのか、赤品種シラーの力強さを和らげ、華やかな香りを引き出すためと言われている。
色素の安定のためとも言われるが、こちらははっきりとした根拠があるとは言えない。
そして、重要な味わいであるが、6年ほど熟成されているからか、革のような香りがする。
スパイスのような刺激的な口当たりだが、渋みを感じることなくスルスルと飲めてしまう。
チョコレートのような味わいもあるが、何とも独特な味わいだ。
『ラムチョップ』
ニュージーランドは羊の国と呼ばれることもある。
人口の数倍も羊の方が多いが、近年では牛が上回っている。
それでも、今回は羊と合わせる。
ラム肉は独特な臭みがあるので、好き嫌いがあると思う。
簡単にローズマリーとにんにくスライス、塩コショウ、オリーブオイルで香りと味をつけておく。
しばらく置いてからフライパンで簡単に焼いた。
今回はウェルダンでしっかりと火を通した。
これでも多少ラム肉の独特な香りがするが、このワインと合わせれば良く進む。
香ばしく焼かれた肉の風味は赤ワインと良く合うのだ。
ワインと食事、どちらも自然の産物だ。
新天地にやってこようとも、人の営みは大きくは変わらない。
第二部のスタートにちょうど良いマリアージュだと思う。
☆☆☆
ニュージーランドには大小様々なワイナリーがあり、豊かで広々とした大地の中にブドウ畑がある。
それでいて、現代のテクノロジーを合理的に使って、世界的にも評価の高い洗練されたワインも多く造られている。
ニュージーランドワインは、自然と科学の融合された産物なのである。
さて、そんな国に僕はいた。
ニュージーランド北島北東部の海辺の街ギズボーン、長い日照時間と温暖な気候、美しいビーチもあり、夏のアクティビティには最高の街だ。
僕はこの街のワイナリーで働くことが決まっていた。
その初日、世界でも最初に昇る朝日とともに起き出した。
一人用のテントを開け、朝の澄んだ空気を吸い込み、ヤギ小屋の下で大きく伸びをした。
どういうこと、と思うだろうが単純な話だ。
家が無いのだ。
無いとはいっても、一応住所は町外れのキャンプ場に住んでいる。
僕は学生時代の始めからこのキャンプ場で暮らしていた。
始めは、現地に行けば住むところぐらいすぐに見つかるだろうとタカを括っていたのだが、その考えは甘く住むところもなくこのキャンプ場に流れ着いた。
実はこの時に日本から友人(男)も一緒にいたのだが、初日は共にキャンプ場の星空の下で寝た。
次の日にはテントを買ったり、ワインと料理で宴会をし、楽しく過ごした。
その友人は僕が入学する日に帰り、残された僕はそのままズルズルとこのキャンプ場のバンガローを借りて住み、学校も卒業した。
それから、仕事が始まるまで間があったので少し旅に出たのが運の尽き、住むところすら無くなっていたという訳だ。
「Good Morning Bro!」
このキャンプ場には、意外と定住者が多い。
僕は挨拶を返し、共用スペースのキッチンで軽く朝食を取った。
定年した老夫婦などがキャンピングカーに住んでいたり、変なインド人も住んでいた。
季節労働者の若者などが2、3ヶ月程度住むこともあったり、実に多くの人種たちが住んでいた。
僕も途中いない時もあったが、1年以上住んでいたので、顔見知りも多かった。
キャンピングチェアに座って広々とした敷地の前でゆっくりとコーヒーを飲んだ。
初日は顔合わせやオリエンテーション、説明会等なのでのんびりとした朝だ。
この時はまだ夏の終わり頃、日が昇ればまだまだ暑くなる。
ニュージーランドは一日に四季があると言われるほど寒暖差が激しい。
それはブドウを育てるのに良い環境であるが、テント生活には少し堪える。
でも、今回の契約は約二ヶ月、何とかなるだろうと思っていた。
テントに戻って着替えて出発の準備だ。
ヤギ小屋の下ではあるが、ヤギは一頭だけしかいない。
しかも、この小屋を使っていないので、雨露を凌ぐのにちょうど良く僕以外にも何人か使っている。
元は白色だったが、使い古されてグレーに近くなったセダンに乗り込み、初出勤するためにワイナリーへと向かった。
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