概要
ギルは年老いたサムをからかう。
「しわだらけじゃないか」
年老いたサムは笑い飛ばした。
「このしわの一本一本が儂の生きた証。羨ましいだろう?」
「そうだな。私には高望みすぎる夢かもしれない。羨ましいよ」
「諦めたのか?」
「まさか。ひがんでいるだけさ」
その言葉とは裏腹に、ギルの表情はにこやかだ。
ギルは呪い師の言葉を思い出した。
「私を追いかけて来なさい。それが呪いを解く唯一の方法だから」
ギルは旅を続ける。出会い、別れ、時には助け、時には迷う。これはギルに係わった全ての人の物語。
各話完結、毎回主人公が変わります。
更新頻度も緩くやっていきます。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!美しい描写で語られる優しい世界。癒しの物語。
【物語の始まりは】
大聖堂の図書館での一場面から始まっていく。ある本をここに納本することに異を唱える若い助祭と司祭との会話によって、その本がどんな内容のものであるか明かされていく。そこにはギルという人物が、呪い師に呪われて不老になり、呪いをとかせるために100年以上も旅したと記されていた。その真意を探るべく、助祭はその本を読むことを許可されるのであった。そこにはどんなことが描かれているのであろうか?
【登場人物について】
群像劇であり。旅人ギルの視点からではなく、ギルに関わった人物の視点から語られていくようである。
補足〈個人的に調べた用語〉
アルビノ……目と皮膚と毛髪をはじめとした全身…続きを読む - ★★★ Excellent!!!各エピソードに隠された謎を解け!
作者のEdyさんはレトロゲーム好き,ということ,そして,主人公の名前が「ギル」であるということ,これでもう面白くないはずながない! と確信して読んでやっぱり面白いです.
と言う資格が私にほんとにあるのか?
ええ,確かに読破はしたのですが,謎だらけなんです.そういえば,「赤い本①」にこうありました.
『細部まで徹底的に。わずかにつながった糸を紡ぎなさい。答えはそこにあります。もちろん、おとぎ話として楽しむのもいいでしょう』
そうです.これを書いている私はとりあえず「おとぎ話として楽し」んだ段階にすぎないのです.いや,楽しいですよ.出て来るキャラクターの名前とか……コーディ,ガ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!不老長寿長編ミステリ
ファンタジー。
ただし、魔法は殆ど出てこない。
主人公ギルの、不老の呪いを受けてからの人生の足跡を読者は追う。
物語の主人公は間違いなく彼だがしかし、
オムニバス形式で進む物語で総て主役を張るのでは無く、
しかも各話の語り手は別個であり、ギルが端役で登場の回もある。
ギルは不老ではあるが不死では無い。
万能でも、卓越した知能を誇るでもない。
剣技体術に優れるが、云わば長寿経験故に自然と備わった年輪。
何故呪われ、何故その解呪を求めるのか。
不老を願う者も世にはある、
仙人など正にそれを道とする。
謎はしかし暫し脇に置き、
ギルと共にこの悠久の旅を、
時に楽しみ或いは苦闘し、選択に呻吟し数多の…続きを読む - ★★★ Excellent!!!旅人と赤い本。いくつもの小さな物語が、やがて大きな物語へ——!
教会の秘密の図書室に納められている「赤い本」。若い助祭がその本と出会い、惹かれてしまうところから物語が始まります。
1〜3話ほどの、それぞれ別の登場人物の視点で語られる物語は、ひとつひとつがとても個性的で、時にはやんちゃな少年、あるいは磊落な酒場の主人、少しくたびれた兵士、そしてある時には人ではない吸血鬼の目線で——。
そんな個性的な登場人物たちの目を通して語られるのはそれぞれ違う時代、違う街。たったひとつ共通するのは、つば広帽子を被った謎の青年ギル。
この物語の素晴らしいところは、それぞれが独立した掌編でありながら、やがてその登場人物たちがあちこちで再登場し、少しずつ繋がって…続きを読む - ★★★ Excellent!!!始まりと終わりは赤い本と共に。
平凡だった男が呪われ、望まぬ不死となる。
その彼が長い旅路の行く末までに刻まれた足跡のひとつひとつが此処にある。
ひとつの揺るぎない目的があったればこそ、長い生で人の心を保てるのであろう。
人であったが故に、過ぎ去りゆく時の彼方で、出会い、触れ合った人々に一雫を残す。
出会った彼等、彼女等との係わりが、繋がりとなり、絆が結ばれる。
それが赤い本に綴られた物語。
彼の旅路がどの様に終わりを遂げたのかは些細なことだろう。
只の人として、人のまま時を渡り歩き、人として繋がり、人として選んだもの。
それこそが、最も大切なことであったと語られる旅の記録である。