不老長寿長編ミステリ

ファンタジー。
ただし、魔法は殆ど出てこない。
主人公ギルの、不老の呪いを受けてからの人生の足跡を読者は追う。
物語の主人公は間違いなく彼だがしかし、
オムニバス形式で進む物語で総て主役を張るのでは無く、
しかも各話の語り手は別個であり、ギルが端役で登場の回もある。
ギルは不老ではあるが不死では無い。
万能でも、卓越した知能を誇るでもない。
剣技体術に優れるが、云わば長寿経験故に自然と備わった年輪。
何故呪われ、何故その解呪を求めるのか。
不老を願う者も世にはある、
仙人など正にそれを道とする。
謎はしかし暫し脇に置き、
ギルと共にこの悠久の旅を、
時に楽しみ或いは苦闘し、選択に呻吟し数多の別れにそっと目頭を抑える。
酔いに任せるも偶には一興。
読み終えたとき、読者も少なからずその視座を拡げるのではないか。
読書による人生の拡張、本作はその醍醐味に満ちた一編である。

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