貴族学園のスパイ ~闇組織のヒロイン達と諜報員の俺が送るラブコメストーリー!?~
抹紅茶
瑠凛学園と悪夢の生徒会に潜入!
第1話 諜報員と生徒会
――私立、
東京都内中枢に創立された、この名門の学園は『貴族』による貴族の為の貴族の世界の上流学園。幼等部、初等部、中等部、高等部、そして大学まで一通り揃っているエスカレーター式。ここは日本中はたまた海外からも、世界で誰もが知る有名企業、財閥の御曹司・御令嬢が通う学び舎。まさに金持ちの為の教育機関。この学園は『家柄』を第一に重んじるので、まず庶民、平民は入学出来ないだろう。
そう、普通ならば――
さて、突然のことだが俺、『
――いわゆる『スパイ』活動の仕事をしている。
幼き頃から所属する情報機関の教育によって様々な
普通では、このお金持ちの学園に入学することなんか出来ない一般家庭でしかない俺の身分もわざわざ機関が
俺がこの瑠凛学園に入学して許される期間は、高等部に入学してから卒業までの約3年。悠長に高等部を卒業して大学まで上がろうなどという考えは殊更持っていない。
つまり、この3年の間に俺は瑠凛学園の裏を暴き出す事に専念しなければならない。潜入前には、機関からは難易度がとてつもなく高いミッションだと言い渡されている。だからといって機関の人間が大勢で動けば学園側に気づかれるだろうと考えられた結果、最低限の人数に絞り込まれて、学園へ送り込む人材には能力・実績・年齢から俺が適正だと判断され、選ばれることになったと聞く。
俺は今まで組織の一員として重要施設警備・要人警護・潜入捜査……etc。……つまり、数々の任務を命令されてきて、どれも遂行してきた。
諜報員にとって――任務失敗=死。
しかし、俺はありとあらゆる任務を成功し続け、どんなトラブルが起ころうと立ち向かって遂行させてきた。
今回も、この任務を確実に遂行出来る自信があった
はずなんだが――……
「どうしました? 修司さん。なんだか落ち着いてないみたいですけど?」
「い……いや、なんでも」
現在、俺が居る場所は瑠凛学園高等部校舎の『生徒会室』
この部屋に居るということは、もちろん俺は生徒会の
……そして今、俺に話しかけてきたのは高等部2学年女生徒の先輩であり、同じく生徒会の役員。
「ふふ、良いお茶が手に入りましたので、ぜひ飲んでリラックスしてください」
「……はい。ありがたくいただきます」
先輩が淹れてくれた紅茶のカップを必死に声と手が震えないように、ゆっくり慎重に手に持つ。
(この茶の中には何も入ってないよな? ……――毒とか?)
「あら? どうして、そんなにかしこまってるのかしら? 修司さんには
「は……はぁ」
漆黒のように煌めいている腰まで長い髪を垂らしながら。お淑やかに落ち着いた佇まいで接してくれるこの人は――
高等部2学年生徒会――副会長
秋田美人と表現出来る滑らかな白い肌。大和撫子を具現化した存在とも言える。優れた知性を持ち、おっとりとしながら誰にでも優しく、今みたいに俺を気遣ってくれる女性だ。あと気になるのは制服ブレザーの上からでも胸元が少々……いや、それなり……いや……訂正。かなり! 大きく! 目立っている!
副会長がこの学園に在籍しているならば、もちろん彼女の家柄は格上だ。俺が調べた情報によれば、彼女の両親と家は日本では超大手人材派遣会社……は表向きで、その実態は……
日本国内トップレベルの広域暴力団!
つまり――ヤクザの家!
日本警察や俺が所属する機関が、国内で警戒している大物の団体組織であり……その組長の娘が――彼女、火澤仁美ということになる。
「もっと
「は……はぁ」(最大勢力のヤクザの娘とまともに会話出来るかよ!?)
そんな俺の焦った内心が表に出ないように気をつけながら、いただいたいた茶を飲む。……うん、毒は入ってない……しっかりと美味しい茶だ。荒れかけていた心を和ませる味わいだ。
「シュージはいっつも緊張してるわよね。もっとキラクになりなさいよ」
今度は俺の対面に座っていた他の女子生徒からハキハキとした声が発した。
サラサラな天然の金髪ポニーテールをユサユサ馬の尻尾のように揺らしているシルクな美白を持つ外国人。
彼女も生徒会の1人であり、火澤副会長と同じ先輩。
高等部2学年生徒会――書記
レイナ・リンデア
ヨーロッパ系の外国人で背が高くスラリとした体型はスーパーモデルそのもの。その体を活かしたモデル活動していたり、はたまた身体を駆使したスポーツ万能でもあり、学園の数多くの運動部から助っ人を頼まれる程、引っ張りだこにされている。
彼女は純粋な外国人だが中等部の時に日本へ越してきたらしく、こうして日本語もそれなりに流暢に話せている。……たまに間違った日本語を使うことがしばしばあるが。
そんな彼女の家柄ももちろん格上だろう。
俺が調べた情報によれば彼女の両親と家が海外の大手貿易会社の社長……は表向きで、その実態は……
――海外の裏社会では名高いマフィアの娘!
俺が所属する機関や海外の諜報機関でも警戒しているレベルの危険な裏組織だ。
「ほんとシュージはワタシに対してもエンリョ?してるとこがあるわよネー」
「そんなことは……」(海外最大規模のマフィアのボスの娘に気軽に喋れるかよ!)
下手に対応を
任務とはいえ、なぜ常日頃からこんな死の緊張感と隣り合わせの学生生活の日々を送らなければならないのか……。
「レイナ。修司さんはまだ生徒会に入ったばかりで、この環境に慣れてないのよ。仕方ないわ」
「ヒトミは相変わらずシュージに、シュガーみたいにとってもアマイわ。そんなんじゃあ、ダメ男?っていうのが出来ちゃうんじゃない?」
「まあ……ダメ男だなんて。そんなの失礼よレイナ。修司さんは入学して、すぐに生徒会の一員になられたんですから、とても立派な方ですわ」
「モー……ヒトミのそういうとこネ」
「ふふ、そういうレイナこそ。いつも修司さんを誘って2人きりでスポーツ練習しようとしてるじゃない」
「ッ!? ……だ、だってシュージはスポーツ出来るし、ただワタシのイイ練習相手になるから誘っているだけで!」
「それはとっても羨ましいわ。私も今度は修司さんと一緒にお勉強会でもしようかしら?」
「! だ……だったら、ワタシも誘いなさいよ……!」
「あらあら、もちろんよ。もしかして私と修司さんの2人きりだけって思っていたの?」
「も、モー! ヒトミのイジワル!」
こうしてキャッキャウフフと仲良く接している二人がまさか……――『ヤクザとマフィア』の娘だと思う人なんか、普通はいるまい。
知らないでいるのは幸せでいいのか、と俺には計りかねながら2人の会話の内容が全く耳に入っていなかった。
(それにこの『二人だけ』ではなく……)
チラっと視線だけ動かして生徒会室奥の壁際にある立派なデスクを見やる。
そこに座っていたのは肩まであるセミロングでサラサラの銀髪を輝かせて、雪よりも透明な真っ白な肌の女生徒。その外見からは歪な存在であるはずなのに神聖にも見える彼女は――
「ん? なにか私に用があるのかな? ――修司くん」
「え!? き、気のせいじゃないですか?」
「そうかな? 確かに今、確実に君の視線を感じたはずなのに」
「――ッ!」
俺はバレないようにと会長の方向には顔を向けずに、一瞬だけ視線だけを向けたのに気づきやがった。諜報活動で鍛え上げられたこの観察術を! こうして一瞬で見破られたせいで余計に落ち着かなくなってしまう。
(……焦るな! 俺は情報機関のエージェント。こんなことで動揺してはならない……!)
俺が一人内心で警戒度を引き上げている一方で、生徒会長は副会長と書紀に麗しき表情を向けながら一瞥すると、
「それはそうと仁美、レイナ。落ち着きなさい。貴方たちがそうして言い合いしているから修司くんはいつまでも縮こまっているじゃない」
「……そうですね。失礼しました」
「……悪かったわ」
(全く違う意味で縮こまっているんだけどな……)
凛々しい態度で、2人の生徒会役員を
高等部2学年生徒会――会長
名前は日本だが、ロシアと日本人のハーフであり容姿端麗はもちろんのこと、あらゆることを見通すと言われる天性の才能を持ち合わせ、この瑠凛学園高等部ではトップに君臨している、さしずめクイーンの存在。
彼女の家柄は世界中に高級ブランドの衣類・宝石の店と展開している大型マーケット最大手会社社長の……もういいだろう。
この人の家も表向きでしかないなんてわかりきっている。
……だが、他の二人も相当アレな家だが、
その実態は――
――裏世界の秘密結社総帥の娘!
かつて、裏社会の組織『フリーメイソン』という数多の大企業が連なる秘密裏集合結社が存在していたが、表で有名になり過ぎたこと、激動の時代の流れで組織は自然消滅していた。
と、都市伝説として噂されていた。
しかし、更に時代は進んでいくと闇の中で密かに遺志を受け継ぐ結社が創られた。
それが『ネザーレギオン』という新たな裏社会の集合組織であり、それを統括しているのが生徒会長の家――『山之蔵』だ。
……つまり全世界の企業を握っている別格の家柄もとい存在。機関でも、こいつには特に注意しろと念押しされているヤバすぎる組織。
「修司くんはまだ入学して2ヶ月。この生徒会に入って1ヶ月よ。まだ慣れていないのは無理もない」
麗しき顔が今度は俺の方へと向けられると、」
「――でも私には、ただ馴染めていないだけではないと気がかりになってしまう。修司くん、何か別の理由でもあるのかな?」
会長からスマイル全開で微笑まれて問いただされ、俺の背筋がゾクゾクと震えた。
危険信号がMAXだと脳内で警報が鳴り響いている。
「い、いや……そういうわけではなく。俺がただ中々、生徒会の先輩方と馴染めてないだけで」
「ふふ、そう。でも、そろそろ慣れてくれないとね。私達は生徒会の仕事だけではなく、きちんと――個人的な交友を深めたいと思っていてね」
(個人的……って何のだよ!?)
正直この3人とは生徒会の仕事だけの付き合いしかしたくない。個人的な交友なんて真っ平御免だ。諜報員とは任務の対象となる人物とは必要最低限でしか接しないのが基本。仲良くなるなんて、あくまで表面だけの関係だ。これスパイの鉄則。
でも、この生徒会の彼女達3人は、グイグイとその鉄の壁を突き破ろうとしてくる!
「修司さん。なにか困ったことがあれば、遠慮なく私達を頼ってくださいね」
――穏やかに微笑む火澤仁美副会長の後ろには、
「ソーヨ。ワタシ達はセンパイなんだから! シュージ」
――明るい笑顔のリンデア書記の後ろには、拳銃を持った
「修司くん。君は生徒会員である同時に私達の仲間だ。もっと親密になりましょう」
――優雅にニコっとする山之蔵生徒会長。
その背後には――――
本物の悪魔がいた。
「は、ははは……」
瑠凛学園に入学して、すぐに俺は生徒会へと潜り込んだ。
しかしそこは――ヤクザにマフィアに――まさかの秘密結社と闇組織だらけの御令嬢達が迎えてくれた……。
秘密組織の諜報員である俺が笑えない、この生徒会はとんでもない
――――あとがき
★2020/10/9
『カクヨム金のたまご 2020年8月~9月』の特集にて、この作品が紹介されました! 読んでみて面白いと思ってくれたら、ぜひ応援よろしくお願いします!
https://kakuyomu.jp/features/1177354054934124846
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