①聖女召喚に巻き込まれた女は追放される-1-
「サユキよ!未来の王太子妃にして純粋無垢で可憐な聖女であるマリカに対する無礼を私は許さぬ!王太子の名の下に貴様を国外追放とする!!」
「本来であれば、貴様は死刑になるところだった!だが、殿下は貴様が異世界人であるが故に死刑ではなく国外追放を言い渡したのだ!」
殿下の慈悲深い心に感謝して今すぐウィスティリア王国を出て行かぬか!!
偉い人の出番は、場が盛り上がっている時というのがお約束である。
国王と王妃は玉座に居ないものの、ウィスティリア王国の王宮の大広間では邪神を倒した祝勝の宴が開かれており、参加している紳士淑女が楽しんでいる中、王太子であるエドワードと王国騎士であるギルバードが異世界───日本から召喚した聖女の茉莉花と共に邪神討伐に参加した紗雪に国外追放を宣言した。
(純粋無垢?可憐?貴方達が聖女と崇めている近藤さんってすぐにやらせてくれるから、大学では『ヤリマン』とか『サセコ』って呼ばれていたし、何より高校時代に堕胎しているのですけどね)
元の世界の茉莉花がどのような女性であったか
紗雪は思い出す。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『あんたよりあたしの方がいい女だから黒川君に捨てられたのよ!五月さん、あんたには自分に女の魅力がない事実を認めたらどうなの?!』
『菅原く~ん♡実はね、欲しいバッグがあるの。それを買ってくれたら・・・生でやらせてあ・げ・る♡』
『谷川君・・・あたし、小林さんから谷川君に近づくなって言われたの!』
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
イケメン俳優やタレントなど足元にも及ばない二人の美形に守られていながらも小動物のように震えている茉莉花は、傍から見れば彼等が言っているように純粋無垢で可憐な少女だ。
しかし、茉莉花が自分より美人な女性に彼氏や恋人と呼ばれる存在が居たら彼女は男を奪っては別れさせる───乙女ゲームのヒロインよろしく、ビッチである事を知っている紗雪は男二人を心の中で嘲笑う。
(しかも、近藤さんって避妊具を着けずに生でしている阿婆擦れだから梅毒に罹っているのよね)
茉莉花本人は気付いていないが、ウィスティリア王国に召喚される前から彼女が既に梅毒に罹っている事を霊視で知っていた紗雪。
それだけではなくエドワードとギルバードは邪神討伐の道中に、親が決めたとはいえ申し分のない婚約者が居ながら茉莉花に手を出していたのだ。
という事は、聖女ならぬ性女の茉莉花に夢中になっている二人も梅毒に罹っているはずである。
日本では医師と薬剤師に相談して薬を調合して貰うのだが、ここはウィスティリア王国というか異世界だ。
梅毒を治す薬はないが、ファンタジー世界では定番とでも言うべき【万能薬】や【エリクサー】という薬がある。
それさえ服用すれば二人の梅毒が治るだろう事は、彼等の婚約者に告げておいた方がいいだろう。
エドワードとギルバードがエリクサーを飲んだ事で梅毒が治ったとしても、二人の婚約者であるシーラ公爵令嬢とオリビア伯爵令嬢がそのまま婚約関係を維持するかどうか知らんけど。
「王太子殿下のお言葉に従います」
エドワードに異世界人の処遇を決定する権利がない事を紗雪は知っているが、脳内お花畑が中枢を担う国から一刻も早く離れたい彼女は参加者達が見守る中、王太子の言葉にカーテシーで答える。
その優雅で気品ある立ち居振る舞いは付け焼刃であるとは思えないくらい──・・・それこそ、貴族令嬢が時間をかけて身に付けたものであった。
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