②キルシュブリューテ王国-3-







「こういう服ってハロウィンや演劇の舞台でしか着る機会がなさそうだけど、キルシュブリューテ王国ではこれが普段着なのよね」


 宿屋の女将に案内された部屋に入るなりネットショップを発動させた紗雪は、【民族衣装】で検索して出てきた服を眺めながら、どこの国の衣装がいいかを考える。


「この服、襟元と袖のフリルが可愛いし、スカートがティアードになってる~♡」


 男性向けは・・・考えてみたらこの世界の男性冒険者の服装って正にゲームのコスプレだから、意味ないのかも知れないわね


 普段着にするなら、女性と同じように民族衣装の方がいいのかしら?


 個人的にはゲームキャラのコスチュームを売りたいのだが、どう考えてもそれは普段着としてキルシュブリューテ王国の平民に受け入れられないだろう。


 ブラウス、シャツ、スカート、ズボン、ベストといった民族衣装を思わせる衣服をそれぞれ一着ずつ籠に入れると、紗雪はその分だけの清算を済ませる。


 すると、購入した衣装が目の前に出てきたので、紗雪はそれ等を邪神討伐の際にウィスティリア王国の王様から貰ったマジックポーチへと納める。


「・・・お腹が空いたわね」


 宿屋はあくまで寝る為だけの部屋を提供する場所であって、日本の宿屋のように宿泊客の為に料理の用意をしないのだ。


 晩ご飯を食べたいのであればバルか食堂に行けばいいのだが、日本と比べたら異世界の食文化は進んでいない。


 紗雪にとって異世界の料理は口に合わないというか、不味いので進んで食べたくない代物なのだ。


「何がいいかしらね?・・・・・・これなんかいいかも知れないわね」


 最初は弁当を買おうと思ったのだが、冷凍だった。


 解凍するには電子レンジが必要なのだが、異世界では使う事が出来ないので諦めてパンを検索していた紗雪の瞳に、ある文字が飛び込んで来た。


 保存食だ。


 これだったら水を入れて暫くの間、放置しておくだけで食べられるはずだ。


「クッキーだけではなく、バームクーヘンもあるのね・・・」


 七日分の保存食セットとバームクーヘンを籠に入れて清算を済ませると、先程購入した民族衣装と同じように保存食とバームクーヘンが紗雪の目の前に出てきた。


「今日は・・・松茸ご飯にしよう~っと」


 袋に水を入れて待つ事一時間


 欲を言えば味噌汁も欲しかったところだが室内で火を使う訳にはいかないので・・・というか、紗雪は茉莉花と違って魔法が使えないのだ。


 異世界人であれば当然のように使えるはずの魔法が一切使えないからこそ、紗雪はエドワードとギルバードだけではなく茉莉花から見下されていたとも言える。


「いただきます」


 味噌汁は諦めざるを得ないとはいえ、久々の日本食である。


「美味しい~♡」


 紗雪は松茸ご飯を堪能する。







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