⑬性女とは-2-







「話が早くて助かる。だが、誤解のないように言っておくが、私達が紗雪殿を貴族の養女にしようとしているのには理由がある」


「一つはレイモンドの為。もう一つはサユキ殿が後見を得る事で行動しやすくする為なの」


(レイモンドの為って・・・。もしかして、二人は私をレイモンドさんの嫁にしようと・・・って!嫁にする気満々だわ!!)


 ランスロットとエレオノーラを霊視してしまった紗雪は、何だか外堀が埋められて行っているような感じに襲われる。


(フリューリングというか、キルシュブリューテ王国の結婚適齢期って何歳くらいなのかしら?)


 レイモンドからその辺りを聞いていなかった紗雪は考える。


 日本では晩婚化が進んでいるのだが、ここは異世界。


 十代前半から半ば辺りが適齢期で、ニ十歳を過ぎれば嫁き遅れと見做される可能性があるのだ。


「レ、レイモンドさん?私って幾つに見えます?」


 キルシュブリューテ王国の結婚適齢期を知らない紗雪がレイモンドに尋ねる。


「紗雪殿?」


 ん~っ・・・


「十五か十六?」


 紗雪の問いかけの意図が見えないレイモンドであったが、彼女の外見から判断した年齢を答える。


「・・・・・・あのですね、レイモンドさん。私、ニ十歳です」


 実年齢より若く見られているという事は、裏を返せば子供っぽいとも受け取れる。


 ここは素直に喜べばいいのか、ショックを受ければいいのか、紗雪は判断が出来ないでいた。


 はぁ?


「二十歳?!紗雪殿は俺より三つ年下だったのか!?」


 もしかして、元の世界では結婚していたとか?!


 二十歳で結婚していたというレイモンドの台詞から、紗雪はキルシュブリューテ王国の結婚適齢期は十代だと察する。


「そんな訳ないでしょ!!」


 一に修行、二に修行、三四がなくて五に修行!


 一に妖怪退治、二に妖怪退治、三四がなくて五に妖怪退治!


 そんな日々を送っていた自分に結婚はおろか、性女・・・ではなく聖女である茉莉花のように何人もの男と同時に付き合った事はないし、彼氏と呼ばれる存在などいなかったのだとレイモンドに言い返す。


「紗雪さん・・・ティンカーベルだったの?」


 プックスー


 自分が二十歳だった頃と比べたらボンキュッボンで遥かに美人な紗雪が喪女であったという事実に、美奈子は思わず吹き出してしまう。


(何か腹立つ!)


 学生時代に彼氏がいたというだけで、男と付き合った経験すらない自分を見下している美奈子にイラッとしてしまった紗雪の顔から表情が消える。


((((怖っ!))))


 そんな紗雪を目にしてしまった一同はgkbrになり、顔からは音を立てて血の気が引いていく。


「さ、紗雪殿?ティンカーベルが何を意味するのか分からないが、貴女に聞きたい事がある。【性女】とは何なのだ?」


 場の空気を変える意味もあるが、以前から聞こうと思っていた事についてランスロットが紗雪に問い質す。







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