⑭その頃の聖女-2-
「あなた、レイモンド、お義母様。水面を見て下さい!」
見慣れているロードクロイツ領の風景から別の景色へと変わった事にエレオノーラが声を上げて驚く。
「「これは・・・ウィスティリア王国の王宮!?」」
三人が目にしたのは、ウィスティリア王国の城壁だった。
紗雪曰く
人間や馬車だったら目的地───今回はウィスティリア王国になる。
普通であれば目的地の到着に日数を要するが、肉体というものを持たない式神であればすぐに移動が出来るのだ。
「では、式神を使って聖女の行動を見物するとしましょうか」
紗雪が操る式神はウィスティリア王国の王宮に居る茉莉花の元へと向かう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「この子が聖女なのね?それにしても・・・聖女って随分と貧相なだけではなく服のセンスも悪いわ」
サユキ殿と大違い!
男性と女性では視線が違うのか、エレオノーラはフリルとレースをふんだんに使っているショッキングピンクなドレスを纏っている茉莉花のセンスの悪さと身体の貧相さを嘲笑う。
キルシュブリューテ王国から覗かれているとは夢にも思っていない茉莉花は、今日も朝だけではなく昼を過ぎても苛立っていた。
『毎日、毎日、こんなクソ不味い料理を出しやがって!!!』
ウィスティリア王国の王宮の一室では、料理を持ってきた二人の侍女に向けて花瓶や熱々のスープが入っている皿を投げつけている茉莉花の金切り声が響き渡る。
『お前達のような無能は・・・こうよ!!!』
茉莉花は割れている花瓶の破片を拾うと、自分付きの侍女達の手を突き刺した上で、乗馬用の鞭で何度も打擲する。
『聖女様、どうかお許し下さい!』
『いい気味だわ!!!』
悲鳴を上げながら七転八倒する侍女達の姿を見た茉莉花は気分がいいと言わんばかりに嘲笑する。
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