⑭その頃の聖女-3-







「「聖女って元の世界でも、あのような事をしていたのか?」」


「日本は美食に溢れていましたので、流石にあそこまで酷くありませんでしたよ?」


 その代わりと言っては何ですけど他人のもの・・・例えば、彼氏とかアクセサリーとか、とにかく自分が持っているものより可愛かったり綺麗だったりすると奪い取っていたし、自分よりも可愛い女の子に対しては取り巻きを使って私刑をしていましたね


「「よく、こんな性悪女を聖女と認定したな!!!」」


 茉莉花の行動に思わず引いてしまったランスロットとレイモンドの言葉に同調しながらも紗雪が答える。


「皆様、近藤さんの腰の辺りを見て頂けません?面白いものが見られますよ」


 四人は紗雪の言葉に従い、茉莉花の腰の辺りに目を向ける。


「「「「!!」」」」


「さ、紗雪殿・・・あれは一体・・・」


「水子。ウィスティリア王国に召喚される数年前に彼女が堕ろした子供の霊よ。父親は・・・誰かしら?何せ近藤さんは何人もの男と同時進行でやる事やっていたから、心当たりがあり過ぎて本人も赤ちゃんの父親が誰なのかを分かっていないでしょうね」


 近藤さん自身は、自分の子供が腰に取り憑いているなんて夢にも思っていないでしょうけど


 霊視で他人の心が読めたり、過去を探れる紗雪であるが、流石に今回ばかりは父親の特定が出来なかった。


「ねぇ、紗雪さん。貴女だったら簡単に成仏させる事が出来たんじゃないの?」


「ええ。ですが、こういうのは他人ではなく親が心を込めて祈った方が子供にとって一番いいのですよ」


 性質の悪い悪霊と化してしまったら自分が手を出して成仏させる事もあるが、頼まれない限り放置しているのだ。


 これは紗雪に限った話ではなく、他の霊能者であっても同じ事であったりする。


「正義のヒーローの子孫とは思えない台詞!!」


「大奥様?大奥様の頭の中では篁 雅臣は正義のヒーローかも知れないですけど、子孫である私は頼まれてもいない仕事を引き受けるなんて事などしませんよ」


 どんなに小さなトラブルであっても自分が関与して解決する勇者的な向こう見ずな熱血ヒーローが活躍するのは、漫画や小説の中だけなのだ。


「大奥様だって依頼を受けていない、金にならない仕事をしないでしょ?」


 世を戦乱へと導こうとする妖怪を倒すという篁の使命を除けば、霊能者が仕事を受けるか受けないかについて判断を下すのは本人次第。


 そういうところは世間一般の仕事と何ら変わりないのだと、紗雪は美奈子に言い返す。


「でもね~。紗雪さんは正義のヒーローの子孫だから、頼まれなくても自主的にやるのが当然じゃないかしら?」


「正義のヒーローの子孫というだけで何でもかんでも首を突っ込む行為は、正義という名の暴力ですよ」


「そ、それは・・・」


 紗雪の反論に美奈子は言葉を詰まらせる。


「ねぇ、レイモンドさん。冒険者ギルドと教会側も依頼が出ていないのに、幽霊やアンデッド系の魔物を倒す為の討伐隊を派遣したりしないわよね?」


「ああ。『レイスやグールといったアンデッド系の魔物が人を襲った』という証言がない限り、討伐隊の派遣はないな」


「皆、不味い料理を出したという理由で侍女達を折檻した聖女が部屋を出て行ったわ」


 エレオノーラの一言で四人は桶の水面に目を向ける。










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